94psのディーゼルを追加 フォルクスワーゲンTクロス1.6 TDIに試乗

公開 : 2019.10.03 09:50

選択に悩むほど車種が増えたクロスオーバーSUVですが、TクロスのTDIの完成度には高い訴求力を備えているとする英国編集部。質実的なディーゼルエンジンを搭載したグレードを、英国の道で評価しました。

上位ユニットとして1.6Lディーゼルを追加

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

フォルクスワーゲン製のTクロス程度のモデルにとって、5年ほど前ならディーゼルエンジンは定番の選択肢だった。しかし今は明らかに違う。逆風の中にあるといっていい。

そんな向かい風にも負けず、フォルクスワーゲンはTクロスに94psの1.6Lディーゼルエンジンを搭載した1.6 TDIを追加した。フォルクスワーゲンのラインナップの中では最も小さなクロスオーバーで、人気が高まっているモデルだ。

フォルクスワーゲンTクロス1.6 TDI SE
フォルクスワーゲンTクロス1.6 TDI SE

1.6 TDIはTクロスの中では最も価格の高いエンジンとなるが、WLTPテストによる二酸化炭素排出量は最も低い、1kmの走行当たり140gに留まるところがポイント。

加えて最高出力は1.0 TSIが搭載する3気筒エンジンと同じながら、トルクはディーゼルエンジンらしく太い。17.8kg-mに対し、25.3kg-mを1500rpmという低い回転数から発生する。家族を数名乗せていても、活発に走ることだろう。

英国の場合、トランスミッションは5速マニュアルが標準装備となる。1500ポンド(20万円)のオプションとして、7速デュアルクラッチAT(DSG)も選択できる。

走り出してみると、印象的なまでにエンジンは静か。走行中に回転数が高まったときだけでなく、アイドリング時でもディーゼルエンジンらしい音は聞こえない。心地よく、控えめな中音域のエンジンノイズが聞こえてくる程度。

良好な乗り心地と太いトルクを楽しむ

エンジンだけでなく、一般道での振る舞いも良好。サスペンションは路面の凹凸を上手に吸収しながら、適度にボディロールも抑え込む、優れたバランスを得ている。乗り心地はカシっとしているがダンパーは良く動き、うねりがあるような郊外の道でのボディコントロール性は素晴らしいと感じるほど。

ステアリングのレスポンスは穏やかで操縦性もやや鈍いから、車高の高いスポーツ・ハッチバックというわけではないが、身のこなしは非常に洗練されているといえる。

フォルクスワーゲンTクロス1.6 TDI SE
フォルクスワーゲンTクロス1.6 TDI SE

太い最大トルクを活かして、4速に入れたまま48km/h程度で走らせていると、エンジンの回転数は1500rpmをわずかに切るほど。スピードがこれより遅くなるか、乗車人数が多い場合なら、3速を選ぶことになる。まるで爪楊枝で大きな石を持ち上げているかのような、不思議な感覚に陥る。

街中で走らせていると、高回転型のツインカム・ガソリンエンジンを低回転で動かしているように元気がなくも感じる。回転数を上げてもパワーが炸裂することはないし、サウンドは少し息苦しそうに聞こえる。1500rpmを割り込むと、ターボチャージャーが充分な圧力を生み出すまでに少し時間がかかるためだろう。

一方でエンジンの回転数を上げていくと、印象的なまでにスムーズさを保ち、荒々しい印象はない。4000rpmを超えるまで回しても特にメリットはないものの、5000rpmまで静かに吹け上がるユニットだ。

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