グループBラリーに実在 プジョー504ピックアップ・ラリー復活劇 前編

公開 : 2019.10.06 07:50  更新 : 2021.02.02 12:45

スクエアなプジョー504に、ピックアップトラックが存在したことはご存知でも、1980年代のグループBラリーに出場していたことを覚えている人は殆どいないでしょう。実用車として生まれ、英国でラリー・レプリカとして生まれ変わったトラックは、新たなステージを楽しんでいます。

1980年代に熱狂的な人気を集めたグループB

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

かつて大きな人気を集めていたグループBだが、特別なラリーマシンは今でもエンスージャストから高い人気を集めている。当時を知らない若い年代のクルマ好きにとっては、少し理解できないかもしれない。

スタートからゴールまでの区間を、多くの観衆が見守る中で走り抜けるラリー。圧雪路や砂利道、露出した岩、林の中、ジャンプポイントやシマウマなど、危険も沢山ある。それが鮮明な記憶を生むのだろう。以前から多くのレースカテゴリーが存在していたが、グループBの熱狂はまさに異次元。1982年にラリーとスポーツカーレースのカテゴリーに導入された、規格外のものだった。

プジョー504ピックアップ・ラリー
プジョー504ピックアップ・ラリー

ラリーに参戦するチームは先進的な素材を多用し重心を下げ、ターボブーストも無制限。ボディは量産モデルのカタチをイメージできるものの、中身は別物だった。出場認可に必要な量産モデルの台数はグループAが年間5000台だったのに対し、グループBは200台と少なく敷居が低く、急速に注目度が高まった。

1981年のグループB前のラリーマシンと、1986年のグループB最後のマシンとの最高出力の差は、2倍以上。フォードRS200やメトロ6R4、プジョー205T16、ランチア・デルタS4など、ほぼラリー出場のために生まれたクルマも多かった。

そんなグループBの歴史にそっと寄り添っているのが、プジョー504ピックアップトラック。ピックアップの504ですら、グループBマシンの候補になっていたことは、当時の過熱ぶりを物語る。205T16のようにスペースフレーム・シャシーや巨大なターボ付きの600psエンジンも、4輪駆動も得ることはなかったのだけれど。

アフリカでラリーを戦ったプジョー504

プジョーの留まるところを知らない熱気が溢れたクルマの一つではある。それに庭のゴミや小屋の資材を運ぶためにも、便利なクルマということは変わらない。モンテカルロの雪の中を滑るように走る様子を想像できないのも当然。504ピックアップは、アフリカのラリーチームによって作られたマシンだ。

頑丈なプジョー504は、アフリカの人々にとって特別な存在といえるほど大切なクルマ。1968年のリリースから1983年までの16年間に、4ドアサルーンやステーションワゴン、クーペ、コンバーチブル、そしてピックアップトラックが作られた。現地工場のノックダウン生産として、ケニアでは2004年まで、ナイジェリアでは2006年まで製造が続いた。

プジョー504ピックアップ・ラリー
プジョー504ピックアップ・ラリー

V型6気筒エンジンを搭載した504のサルーンは1970年代半ばにグループ4マシンとして10年ほど活躍するが、ピックアップがラリーマシンとして認可されたのは1982年。既に大量生産されていたため、グループAでの参戦も考えられたが、車内空間が狭く規定を満たせず、グループBへと割り振られた。

エンジンサイズも小さく、ラーダ2105VFTSやシトロエン・ヴィザ・ミルピステ、スコダ130LRなど、小さなマシンが属するB−9からB−11というクラスに属し、ピックアップにもチャンスはあった。当時の記録にはピックアップにV6エンジンが搭載されていたと残っているものもあるが、実際は1971ccの4気筒で、最高出力は172psだ。

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