プレミアム・ライバルを凌ぐ フォルクスワーゲンTロックR 300ps
公開 : 2019.11.04 11:50
驚くほどのスピードと安定性を獲得したTロックR。英国編集部では、ゴルフRを選ぶ必要がないほどに、最高のパフォーマンスを備えたコンパクト・クロスオーバーだと高く評価しています。南フランスで評価しました。
ゴルフRと同じエンジンは300ps
フォルクスワーゲン・ゴルフRを街で見かける機会は多くはない。ファリミー・ハッチバックとして、背の高く高性能なSUVに人気が移っているという、時代の変化の現れでもあるのだろう。
その今を受けたのが、フォルクスワーゲンTロックR。アウディSQ2やBMW X2 M35iなど、増え続けるスポーティなクロスオーバーに加わった新モデルだ。
SQ2やゴルフRと同様に、TロックRがベースとするのはフォルクスワーゲンのMQBアーキテクチャと呼ばれる骨格。エンジンはEA888型2.0L4気筒ターボだ。
最高出力300ps、最大トルク40.7kg-mと、同じエンジンを搭載するゴルフRとスペックも共通。7速デュアルクラッチATとハルデックス・カップリングを採用した4輪駆動システムを備える。
新しいアルミニウム製のサブフレームが用意され、通常のTロックより遥かにスポーティなサスペンション設定を得ている。ブレーキはゴルフRではオプションとなる、直径17インチもある高性能版が標準装備として付いてくる。
だがSQ2とは異なり、アダプティブ・ダンパーは695ポンド(9万円)のオプション。アクラポビッチ製のスポーツマフラーは、3000ポンド(41万円)で装着が可能だ。
今回の試乗車にはどちらも装備され、19インチの「プレトリア」アルミホイールを履いていた。8.0インチモニターのインフォテイメント・システムは、英国仕様の場合は標準装備だという。
印象的に高い横方向のグリップ力
試乗したのは南フランスのニース近郊。都市部ではTロックRのスポーティな側面はうまく丸められている。ひと目もさほど引かない。ダンパーの硬さを引き締めると、ボディの上下動は路面の凸凹に応じて感じ取れるようになる。強く揺さぶられて息が詰まるというほどではないけれど。
コンフォートモードでは柔軟性を感じられるが、小さな轍や橋桁の継ぎ目などを通過すると、それなりに騒々しい。それでもアウディSQ2やBMW X2 M35iより遥かに居心地は良い。
混雑したニースの街を抜け出して、内陸の自然公園が広がるコルドゥヴァンスへ続くワインディングへたどり着いた。すべてをレースモードにすると、TロックRは一変する。7速ATの変速ラグは最小限に縮められ、4気筒ターボエンジンは力強さを一気に増す。
何よりもTロックRで最も印象的なのが、横方向のグリップ力の高さ。4輪駆動システム「4モーション」の効果によって、アンダーステアを完全に打ち消している。ステアリングの操舵時の重み付けも素晴らしい。
リアタイヤがアウト側へ振り出される間もなく、フロントタイヤはコーナーの頂点目指して路面に食らいつく。テールがムズがる感覚も掴みやすいが、アスファルトを執拗に掴む粘り強さがTロックRの魅力を高めている。
車高が高いだけにボディーロールも小さくはない。だが素晴らしいルートを、ハイスピードで走らせる気持ちを削ぐほどの傾きではない。