凝縮されたシトロエンのキャラクター エグザンティアSX 魔法のじゅうたん、今なお崇められる

公開 : 2019.11.23 05:50  更新 : 2021.10.09 22:43

1993年にデビューしたシトロエン・エグザンティア。今日の眼で見た時、特筆すべき点はサスペンションシステムにあります。いわゆる「ハイドロ」。これがシトロエンと消費者に与えた影響を振り返ります。

影響力の源はハイドロにあり

photo:Koichi Shinohara(篠原晃一)

1993年にデビューしたシトロエンエグザンティアというクルマを今日の眼で見た時、特筆すべき点はサスペンションシステムにある。

流体とガスによるハイドロニューマティック通称「ハイドロ」だ。「魔法の絨毯」のような極上の乗り心地を示すシトロエン独自のサスペンションは、現代の同社のラインナップに存在していないからである。

フラッグシップのXMにも通じるシャープなマスクが特徴のエグザンティア。前期モデルはバンパーが無塗装だったが、後期型では塗装されている。車名は本来はクサンティアなどと発音するが、日本名はエグザンティアに改められていた。
フラッグシップのXMにも通じるシャープなマスクが特徴のエグザンティア。前期モデルはバンパーが無塗装だったが、後期型では塗装されている。車名は本来はクサンティアなどと発音するが、日本名はエグザンティアに改められていた。

車高を保ち、また変化させるために油圧を使い、バンプ・ストロークをエアに任せる「ハイドロ」は1955年、シトロエンDSとともにデビューし自動車世界に衝撃を与えた。

20世紀で最も影響力のあったクルマを選ぶカー・オブ・ザ・センチュリーでシトロエンDSはフォード・モデルT、ミニに続く3位に入っている。評価の理由はもちろん、「ハイドロ」をはじめとする時代を超越したハイテクにあった。

ハイドロニューマティックシステムは、DSのデビュー以降、シトロエンの代名詞として開発が続けられ、1989年デビューのシトロエンの旗艦モデルXMでは電子制御のハイドラクティブと、その進化版であるハイドラクティブIIへと進化している。

エグザンティアの場合、ベースグレードのSXがハイドロ、上級モデルのV-SXにはハイドラクティブIIが装備されていた。

販売店には「ユーノス」の名も

90年代のシトロエンはスモール・ハッチのAXやZX、ミドルサイズのエグザンティア、そして旗艦であるXMといったラインナップを揃えていた。

ハッチバックの2台は金属バネが与えられ、一方上位2モデルがハイドロのアシを備えていた。

エグザンティアの先代モデルとなるBX。スタイリングはエグザンティアと同じくイタリアのベルトーネが担当していた。直線的でシンプルなボディにシトロエンらしさが漂う。リアタイヤを覆うスカートはエグザンティアに継承されなかった。
エグザンティアの先代モデルとなるBX。スタイリングはエグザンティアと同じくイタリアのベルトーネが担当していた。直線的でシンプルなボディにシトロエンらしさが漂う。リアタイヤを覆うスカートはエグザンティアに継承されなかった。

エグザンティアは全長4523mmの4ドア・セダンであり、サイズ的にはDセグメントに含まれる。その先代モデルとなるのはイタリアのベルトーネによる直線的なスタイリングが鮮烈なBX、一方後継モデルはC5だった。

エグザンティアのスタイリングもベルトーネが担当しており、セダンとワゴンタイプのブレークという2種類のボディが用意されていた点もBXに通じている。

横置きされ前輪を駆動するパワーユニットは1.6-2.0Lの直4のガソリン、ディーゼル・ターボと、ガソリンの3L V6が用意されていた。日本市場ではデビュー当初は2LガソリンのSXとV-SXのセダンのみが導入され、後にブレークも加わる。

当時わが国におけるシトロエン正規ディーラーはマツダ(ユーノス名義だった)と新西武自動車だった。

最も高性能なエグザンティアは究極のハイドロともいえるアクティブサスペンションでロールを相殺するエグザンティア・アクティバだが、これは正規輸入されなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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