バック・トゥ・ザ・フューチャー再び デロリアンをEV化した男
公開 : 2019.12.01 11:50 更新 : 2019.12.01 17:44
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名なデロリアンDMC-12をEVに換装した男がいます。テスラ製のコンポーネンツを使い、およそ2600万円の費用をかけて製作したというクルマに試乗しました。まだ完成ではありませんが、今後に期待が持てる仕上がりです。
デロリアンをEVに
eメールが届いた。そこには「ドーセットまで行って元ロックンローラーらしい男に会ってきてくれないか?古いクルマに電動パワートレインを搭載したというんだ」と書かれていた。
EVは目覚ましい発展をとげており、それに試乗するのはやぶさかではない。しかしクラシックをベースにEVパワートレインをレトロフィットするのは少し違うのではないかというのがわたしの持論だ。電動化したジャガーEタイプでロンドン中心部を走ることもできるが、なぜそこまでしてロンドンを走りたいのだろうか。
しかしここプールでは、事態は少し違っていた。まず第一に、この男フィル・ウェインマンは本当にロックンローラーであった。彼は1960年代のセッションドラマーであり、その後スウィート、マッドそしてベイシティ・ローラーズなどをプロデュースしている。
そして次に、今回電動化されたクルマとはデロリアンであった。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名となったこのクルマなら、電動化しても様になるのではないだろうか。まして重く非効率なPRV型V6エンジンを置き換えるなら、良くなるしかないだろう。
しかしこのクルマを詳しく見るまえに、1つの疑問が湧き上がってきた。「なぜ?」というものだ。「わたしは以前から電動車に興味を持っていました」とウェインマンは語る。「80年代前半、ミネソタで作られたMG TDベースの電動キットカーを輸入しました。その後1990年代には電動車協会に加入し、わたしはメンバー77でした」
パワートレインはテスラから流用
「デロリアンをEVに改造するのは完璧な計画だと思いました。このクルマを米国で1万9000ドル(204万円)で購入し、持ち帰ったのです。もともとの塗装は赤で、少し派手なクルマでした」
この取材はキャッスルマン・オート・リペアーズの敷地内で行われた。ここのクリント・タウンセンド社長がこのデロリアンEV製作の責任者だ。「最初は、クリントはあまり乗り気ではないようでした」とウェインマンはいう。「わたしはこのクルマが彼の将来にも役立ち、テクノロジーを学ぶこともできると説得したのです」
タウンセンドは今や電動パワートレインのオタクになりつつあるようだ。それと同時に彼は優秀なメカニックでもある。このデロリアンをコンセプトカーのレベルではなく、完全なクルマとして仕上げたのだ。
「モーター、バッテリー、制御システムなど電動コンポーネンツはテスラから流用しています。ブリストルにあるゼロEVという会社が提供してくれました」とタウンセンドは説明する。
デロリアンに詳しくない人のために説明すると、このクルマはロータスの手が入っているのだ。エスプリなどと同様にスティール製バックボーンの入ったシャシーにグラスファイバー製モノコックが載せられている。そして有名なステンレス製ボディパネルがモノコックにボルト留めしてある。