アウディA1スポーツバックの日本デビューを記念した特別仕様

公開 : 2020.01.03 20:50  更新 : 2021.10.11 13:51

ボディサイズを拡大して登場したアウディA1スポーツバックは、尖ったスポーツキャラではではなく、汎用的な実用性を持っています。街乗りや遠出にも適した、長く付き合えるスポーツカジュアルなモデルとなっています。

玄人好みのスポーツカジュアル

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)

衝突安全性の向上やプレミアム志向の強まりで車体サイズは拡大傾向だったが、道路の幅や駐車スペースがそれに応じて拡がるわけもなく、現実的な運用を考えればさすがに限界近くなってきたようだ。

そんな中、2代目となるアウディA1スポーツバックはボディサイズを拡大して登場したのだが、プレミアム感向上を狙った印象はない。

前後フェンダーまわりのプレスラインやリアピラーなどはスポーツクワトロをモチーフとしている。
前後フェンダーまわりのプレスラインやリアピラーなどはスポーツクワトロをモチーフとしている。

ちなみに全長は90mm長くなったが、これはホイールベース延長分と等しく、全幅や全高は従来モデルとほぼ同じ。車体サイズの拡大はキャビン容量増が狙いと見るべきだろう。

フロントにマスク上部に空いた3本のスリットや前後のフェンダー周りのプレスライン、リアピラー等々は4WDでWRCに革命を起こしたスポーツクワトロをモチーフとした外観。

そう言われれば見えなくもないが、実際に目の当たりにすると使い回しのよさそうなパッケージングのほうが印象に残る。スポーツクワトロ云々で「スポーティカー趣味のクルマか!」と身構えさせるような凄みはない。

内外装ともにヘキサゴンをモチーフとし直線と角が機能感を主張するが、そうぎすぎすして見えないのは微妙な曲線と曲面を与えたデザインの巧みさ。プロ向けの小技を入れ込んだスポーツカジュアルといったバランスでまとめられている。

要するにスポーツキャラで尖ったタイプではなく、汎用的な実用性や程よく若々しく程よく大人っぽいのが新アウディA1なのである。

試乗したモデルはA1の日本デビューを記念した特別仕様の1stエディション。35TFSIアドバンスドをベースにナビゲーションパッケージ等の主なOPを装着する。他にはスポーツサスなどのファントゥドライブに振った35TFSI.Sラインが設定されている。

刺激は少なめだが、まとまりの良い走り

刺激の少ない走りである。というと平凡で退屈なクルマと思われてしまいそうだが、部分的に誇張された走行感覚や運転感覚は一時的な昂揚は得られても長い付き合いには適さない。

パワートレインは1.5Lターボに7速DCTの組み合わせ。ダウンサイジングターボらしく25.5kg-mの最大トルクを1500〜3500rpmで発生する。

150ps、25.5kg-mを発生させる1.5L直4ターボエンジンは、7速DCTと組み合わされる。
150ps、25.5kg-mを発生させる1.5L直4ターボエンジンは、7速DCTと組み合わされる。

シフト制御も最大トルク発生回転域に合わせている。巡航回転数1500〜2000rpm、緩加速で2000〜3000rpmに変速制御するのは最近のパワートレイン制御では標準的だが、踏み込み直後のトルクを強調するわけでもなく、ダウンシフトを伴う加速では多少引っ張り気味なものの、ペダル踏み込みに込めた意志に過不足なく応答してくれる。

巡航ギア維持の余力感と狙った速度に向かう加速感のバランスがいい。特性を意識しないで済む自然体の扱い易さと換言してもいいだろう。

このパワートレインにして、このフットワークあり、と言う走り全体のまとまりのよさも好感。うねった路面等での上下動は伸び上がり側が少々目立ち、それほど重質な印象はない。

ちょっと弾むような挙動も見受けられたが、ドタブルと車軸周りを揺するような振動も少なく、据わりよく落ち着いた乗り心地を示す。様々な状況で乗り疲れしにくいタイプだ。

記事に関わった人々

  • 前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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