【2019年もっとも運転の楽しいクルマを決定(6)】ドライビング・ファンを超えた今年のベスト ドライバーズカー選手権2019(6)
公開 : 2020.01.04 18:50 更新 : 2021.03.05 18:45
AUTOCAR恒例の今年ベストを決める、通称ハンドリングデイ。英国南西部の一般道とサーキットで、ドライバーの満足度一番を決定します。アリエル・アトムかポルシェ911カレラSは、マクラーレンを退けることはできるのでしょうか。
半分剥き出しのアトムを駆る
アリエル・アトム4は、ポルシェ911ほどに操縦性の奥行きはない。すべての感覚に過剰な刺激が届くマシンだ。一般道でヘルメットを被らなければ、身体は周囲環境に露出し、ターボチャージャーの悲鳴とホイッスルが鼓膜をつんざく。まるで戦闘機がすぐ後ろを追いかけて来ているような迫力だ。
運転は肉体運動だとも気付く。MTだからペダルは3枚。感覚に影響を与えるステアリングのアシストや、ブレーキのサーボも備わらない。電子制御といえば、可変制御されるトラクション・コントロールとターボブースト圧くらい。アスファルトの上にあるのは、半分剥き出しのアトムと、ドライバーだけ。
「マシンとしてチャレンジしがいがあるけれど、運転はしやすいですね。アトム4に最も適したスタイルが見つけられれば、走らせる喜びも素晴らしい」 しばらくステアリングを握ったソーンダースが話す。
ターボブーストを最大の「3」に高め、サーキットを走らせればセンセーショナル。ターボ過給される、ホンダ・シビック・タイプR由来の2.0Lエンジンは、5000rpm手前でも充分パワフルだが、それを超えると二次関数のグラフのように飛躍的に加速度が増していく。
暴力的な加速度で邁進していくアリエル・アトム。アトムのスピリットといった感じだ。あまりにも激し過ぎるから、理性的にクルマを理解するためにはサーキットを数周回る必要があった。
調子が掴めてくると、アリエルが見えてくる。トラクション・コントロールを最も弱くし、落ち着いて味わっていくと、極めて正確な情報が絶え間なく全身に伝わってくる。クルマの限界領域へ迫る不安もなくなる。
思わず心を奪われるエナジードリンク
従来のアリエル・アトムの場合、高い位置にミドシップされたエンジンの質量にしっぺ返しを食らう可能性を常に感じていたが、アトム4ではそれがない。ポルシェ911のように、ドリフトアングルが増え続ける一方、ということもない。
ステアリングは90度以上切り込んでいくとぐっと重さが増し、それ以上深いドリフトアングルを求める気持ちを抑えてくれる。クルマの極めて自然な操縦性で成り立つ、バランスの取れた変化だ。常に正確性を味わいながら、コーナーの曲率に合わせた穏やかなドリフトアングルで遊ぶことができる。
思わずアアトム4に心が奪われ、あと1周と思いながら、10周くらいサーキットを楽しんでしまった。
一般道でもその楽しさはひとしお。特に責め立てなくても、豊かなドライビングフィールに浸ることができる。特に今回は晩秋の穏やかな天気が手助けしてくれた。アトム4なら、ただ周囲を宛もなく走らせるだけでも笑顔になる。運転という行為自体に、スリルを感じることができるのだから。
すべての自動車がデジタル化されていく現代において、徹底的にアナログな、エナジードリンクといったところ。「余程のことがない限り、このクルマを嫌いにはなれないでしょう」 とサイモン・デイビスが端的に表現した。
今回のトップ3はマクラーレン600LTスパイダーとポルシェ911カレラS PDK、アリエル・アトム4が選ばれている。いずれも素晴らしいクルマで、審査員の誰かは、この3台の1台へトップの配点をした。いずれもチャンピオンに並ぶ実力を持っている。
しかし例年のとおり、決り文句だけれど、BBDCに選ばれるのは1台限り。その結果は・・。