【陶酔させ満たしてくれる】ケーターハム・スーパーセブン1600へ試乗

公開 : 2020.04.28 10:20

必要以上に恐れず、運転を楽しめばいい

必要以上の緊張はいらない。少なくとも路面が乾燥していれば、細身のタイヤはしっかりグリップしてくれる。かなりプッシュしなければ、グリップの限界は迎えない。

コーナリング中にアクセルを深く踏み込みすぎても、テールスライドの挙動は掴みやすい。恐れなくて大丈夫。低い着座姿勢で楽しめば良い。

ケーターハム・スーパーセブン1600SV(英国仕様)
ケーターハム・スーパーセブン1600SV(英国仕様)

ボディロールはほとんどない。サスペンション・ストロークはかなり短いが、舗装の荒れた郊外の道でも、充分な柔軟性がある。メーカーによれば車重は540kgと軽量だから、ほかのクルマには真似できない鋭さで向きを変える。

快適性は見てのとおり。オプションのサイドガラスを装備しても、頭部の風の巻き込みは小さくない。オプションのファブリック・ルーフを装備しても、隙間風が入ってくる。風切り音も大きい。

高速道路を110km/hで走行すれば、エンジンの叫び声に重なり、タイヤのロードノイズが届く。車内での会話は楽しめない。耳栓をした方が良いかもしれない。リラックスして走りたいのなら、マツダMX-5(ロードスター)を選ぼう。

試乗車のシャシーは標準サイズだが、一回り大きいSVサイズを選んでも、実用的になるわけではない。クルマへの乗り降りすら簡単ではない。ルーフを外せば楽になるが、閉じたたままでは難しい。身長にもよるけれど。

スーパーセブンの車内は居心地が良いとはいえないだろう。SV版でも。シートは長時間座っていても平気だし、ボディサイドの囲まれ感も少ないが、間違いなく小さくて狭い。

背の低いドライバーには、シートの前方へのスライド量が不足気味。位置調整自体にも、かなりの力がいる。

ドライバーを陶酔させ満たしてくれる

2000ポンド(27万円)のオプションとなるベージュ色のレザーは見栄えが良いが、装備は必要最低限。メーターパネルはなく、ウインカーはトグルスイッチ。ライトやワイパーなど、すべてがスイッチ。1970年代のままといった感じだ。

インフォテイメント・システムもない。ラジオすらない。

ケーターハム・スーパーセブン1600SV(英国仕様)
ケーターハム・スーパーセブン1600SV(英国仕様)

荷室はシート後ろにある、ビニールカバーがされた小さなボックスだけ。プレススタッドを外して、カバーを開ける。布製のカバンなら2個入るかもしれないが、ルーフをしまうと余地はさほど残らない。

事故を避けるには、ドライバー自らのスキルが何より求められる。事故にあった場合、ドライバーを守ってくれる装備はほとんどない。どんなスポーツカーの基準で見ても、うるさく、実用性に欠け、安全性も乏しい。

ケーターハム・スーパーセブンを購入するのに、分別のある理由はいらない。スポーツカーの運転を全身で楽しみ、強く体感するために買うクルマだ。すべての弱点とリスク、可能性を理解したうえで。

多くのドライバーにとって、マツダMX-5(ロードスター)の方が、選択肢としては適している。スピードや生々しさで及ばなくても、より手頃な価格で、楽しいドライブが味わえる。しかも、人間の乗り物らしい安全性と快適性が付いてくる。

マシンと完全に一体となり、息を合わせながらドライブしたい、熱烈なエンスージアストの選択肢がケーターハム・スーパーセブン1600。ドライバーを陶酔させ、満たしてくれる、ほかに類を見ないスポーツカーだ。

ケーターハム・スーパーセブン1600(英国仕様)のスペック

価格:3万9665ポンド(535万円)
全長:3180mm
全幅:1575mm
全高:1090mm
最高速度:196km/h
0-100km/h加速:5.0秒
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:540kg
パワートレイン:直列4気筒1595cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:136ps/6800rpm
最大トルク:16.8kg-m/4100rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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