【車重を包み隠すハンドリング】メルセデス・ベンツE 300de EQパワー(4) 長期テスト
公開 : 2020.05.09 08:50
長距離に最適なディーゼルエンジンと、都市部に適したハイブリッド、ステーションワゴン・ボディという、理想的な組み合わせに思えるE 300de。短距離ながらEVモードでの走行も可能です。その実力を長期テストで確認します。
積算1万5531km ベストのシートヒーター
筆者が試乗したクルマの中で、1番快適に体を温めてくれるシートを持っていたのは、ベントレー・コンチネンタルGTC。E 300de EQパワーのシートヒーターも良いが、しばらく時間が経つと勝手にオフになってしまう。
他のメルセデスでも同様だった。不必要に温めすぎないようにする、配慮なのかもしれない。でも、ドライバー次第でオン・オフを決められた方が良いと思う。
積算1万6450km 快適さを引き出す操縦性
プラグイン・ハイブリッドとディーゼルという組み合わせは、長所を引き出し合っているように思える。それでは、ハンドリングへの影響はどうだろう。
車重が2tにも及ぶクルマだから、ハンドリングを期待すること自体、無理がなくもない。クルマが重くなるほど、操縦性を高めることは難しくなる。エンジニアがどれだけ努力したのか、試される領域でもあるのだ。
ここでいうハンドリングとは、爽快にドリフトを決めたり、道幅いっぱいのブラックマークを残す能力ではない。日頃の運転が快適に感じられる、もっと大切な要素の方。
メルセデス・ベンツE 300de EQパワーは、そのサイズやボディ形状、車重を考えれば、操縦性に優れている。そもそもメルセデス・ベンツは、大きなクルマのステアリング性能に定評がある。自社もそれを誇りにしている。
精度が高くリニアなステアリング
いまから27年前。編集長のスティーブ・クロップリーは、長期テストでW140型のメルセデス・ベンツS500 SEに乗っていた。そのクルマで南フランスの素晴らしい数日間を楽しんだ。
既に四半世紀も前のことで、乗り心地や洗練性に関しては、あまり覚えていない。だが、信じられないほど運転しやすかったことは記憶にある。その体験を思い出させてくれる。
ボンネットの先端に突き出たスリー・ポインテッド・スターのマークを目印に、コーナーではノーズの向きを変えていく。確実にコーナリングしていくが、狙ったラインを乱すほど、曲がることはなかった。
現代の多くのライバルと比べたとき、E 300de EQパワーの操縦性が秀でているわけではない。しかし、重量を見事にマスキングした素晴らしい仕事は、評価するべき事実。
ハイブリッド用のモーターとバッテリー、関連機器で、標準のEクラス・ステーションワゴンより265kgも重いのだから。
最も重要なポイントは、破綻のないステアリングにある。重み付けは完璧で、切った分だけ線形的に曲がっていく。精度も高い。
シャシーは、ある程度の速度域までは、ステアリングに合わせて楽しませてくれる。ダンピングの効いたサスペンションは垂直方向の姿勢をしっかり保ち、路面の傾きや変化をうまく丸め込んでくれる。
荷物や人を満載した状態だと、流石に早い段階で限界を迎える。でも大切な家族や荷物、ペットを乗せた状態で、高速コーナリングを楽しむドライバーはいないだろう。少なくとも筆者はしない。