550bhpのアストン・マーティンDBS
公開 : 2012.05.16 13:52 更新 : 2017.06.01 00:55
2003年に登場したアストン・マーティンDBSが、550bhpのエンジンを搭載して再登場する。よりパワフルになり、一部カーボンファイバーとなったボディをまとうという新しいDBSのリファインの方法は、1990年代後半のヴァンキッシュに見られた手法だ。
DBSの基本的な構造は代わりはない。フロントにマウントされた6.0リッターV12エンジン、トランスアクスル・ギアボックス、ウィッシュボーン・サスペンション、そしてVHフレームという構成だ。
しかし、プラットフォーム自体はキャリーオーバーされてはいるものの、プロジェクトVH310とネーミングされたその内部は、ほとんど一新されている。クルマがほとんど一新されたことをメッセージとして伝えるために、アストン・マーティンはDBSという名前を捨てることすら考慮に入れているという。
アウターパネルは、One-77からインスピレーションを受けた、より攻撃的なルックスとなっている。カーボンファイバーが多用され、キャビンのクオリティも上げられている。それは、150,000ポンド(1,920万円)のヴィラージュとの違いを明確にする狙いもあるようだ。そのデザインは、DB9のデザインとの訣別でもあり、現行モデルに対する批判ともとれるほどだ。
リア・ウイングは、現行のDBSのフロント・ウイング、ボンネット、そしてトランクリッドと同様カーボンファイバー製だ。また、フロント・グリルは、アストン・マーティンのアイデンティティを決める重要なキーではあるが、よりワイドなデザインにされている。
ボンネットも大きな変化を見せる部分だ。それはその下にエンジンを収めるために大きく膨らんだ曲線を持つ。すべてのVHプラットフォームをもつV12モデルは膨らんだボンネットを特徴とするが、それは最新の歩行者保護規則にも沿ったものでもある。背の高いV12エンジンにより多くのクリアランスが要求されるためで、DB9(プロジェクトVH113)、ヴィラージュ、そしてラパイドも将来的にそのデザインになる予定だ。ちなみに、ドライサンプV8を搭載するヴァンテージ(VH200)はエンジン高がそれほど高くないので、その影響は受けないと予想される。とにかく、2013年モデルについては、このボンネットのデザイン変更が必須となる。
DBSのVHプラットフォームは多くの新しいパーツで再設計されている。パネルとブラケットをひとつのパーツとしてシンプルにデザイン・製造することでシャシーの強化につながっているのだ。
ダイナミクスは改善されているが、概して現在のモデルに近いものがある。それでも40bhp上がったパワーのため、ステアリング、グリップ、そしてハンドリングは改良が施されている。アジャスタブル・ダンパーによって、現行モデルの乗り心地、ハンドリングは保持されているという。
キャビンも改善された点だ。深く曲線美をもつダッシュボードは基本的には同じデザインだが、品質は向上し、ディテールは全てが改善されている。AUTOCARがスクープしたニュルブルクリンクでテストされているプロトタイプは既存のダッシュボードが付けられていたが、プロダクション・モデルはスイッチ、計器類、インテリア・トリム、シート、ドライビング・ポジションなどすべてが一新されると関係筋はコメントしている。
ピュアなドライバーは、DBSから6速マニュアル・ギアボックスがなくなることを歓迎しないだろう。DBS/DB8/ラピードといったアストン・マーティンは、今やマニュアル・ギアボックスを提供する数少ないスーパーカーだ。もちろん、6速マニュアルを選択するカスタマーは非常に少ない。しかし、標準がZFのオートマチックではあるが、アストン・マーティンは6速マニュアルをカタログに掲載し続けるという。
エンジンはコスワース・デザインの6.0リッターのV12で、そのパワーは550bhpだ。自然吸気のエンジンであるがゆえに、そのパワーアップの元となるのは、内部の構成要素のブラッシュアップとエンジン・コントローラーのリマップが中心だ。その結果ベースとなった510bhpよりも7%のパワー・アップを果たしている。もちろんこのパワーでは730bhpのフェラーリF12ベルリネッタに対抗できないという評論家もいる。しかし既存のDBSの3,500人のオーナーに聞くと、アストン・マーティンには節度を求めているようだ。フェラーリやAMGのオーナーを誘惑することよりも、DBSがアストン・マーティンとして正しい姿にあることが必要なのだという。
アストン・マーティンは、このDBSを1年間に1,000台の販売することを考えている。2010年のピーク時には824台を販売したことからも、あながち無理な目標ではないようだ。スーパーカーに対する熱が冷めつつある中国市場ではあるが、アストン・マーティンの狙いは中国であるという。
新しいDBSは今年の夏に生産がはじまり、デリバリーは年内に始まる。8月のペブル・ビーチ・コンクールデレガンスと、9月のパリ・モーターショーが、正式なデビューとなる予定だ。価格は現在の179,000ポンド(2,300万円)から上昇し、オートマティック・クーペで185,000ポンド(2380万円)となるという。