忘れ去られし傑作車 メルセデス・ベンツ・ラ・ピックアップ(1972)
公開 : 2017.02.12 04:10 更新 : 2017.06.01 00:29
昨年、メルセデス・ベンツ Xクラスというピックアップ・トラックが発表されたニュースは、驚きをもって迎えられた。
しかし、さかのぼること45年。1972年に送り出されたあるメルセデス・ベンツが、彼の地で人々の心を掴んでいた……。
170V、Gクラス メルセデス・オフローダーの歴史
BMW? アウディ? こうしたメーカーのピックアップ・トラックと言われても、いまいちピンと来ないだろう。
しかしメルセデス・ベンツには、このカテゴリーのたしかな歴史が存在する。1940年代、Eクラスの先祖にあたるメルセデス・ベンツ170Vに、フラットベッド・トラック仕様が登場した。1970年代にはGクラスの開発がはじまり、息の長いオフロード・モデルとしてブランドを牽引してきたのはご存じの通りだ。
しかし、ここで紹介するモデルには、他のクルマにはないエレガントさがある。W115のタテ目サルーンの派生車として、1972年から1976年の間にアルゼンチンで製造されたこのモデルは、ラ・ピックアップの名で人々に親しまれていた。
ゼッチェ会長とラ・ピックアップの出会い
そしてこのモデルを今でも気に入っている男がひとりいる。ディータ・ゼッチェ、ダイムラーの会長である。
「南米に駐在していた80年代に、ひと目見て虜になってしまいました。ラ・ピックアップは頑丈さが売りでもないですし、ビジネス面で成功した事実もございません。しかし、運転していて大きな喜びを感じるクルマだったのです」
1972年式の220d(シングル・キャブ仕様)は、オレンジに色づけられた美しい個体である。スウェーデンで開催されたXクラスの発表会で展示されていたのが上段の写真だ。
それにしてもこの姿、ピックアップ・トラックでありながら、気品を感じさせる。広大な土地を支配する大地主たちが、羊を運び出すには、おあつらえ向きのクルマだと思わないだろうか?