最後の空冷911 ポルシェ993購入ガイド

公開 : 2017.05.27 17:10  更新 : 2017.11.25 16:22

最後の空冷911である993の最終製造年は1998年。従って、もうすぐ生産が終了して20年になります。すでにモダン・クラシックの域になろうとしていますが、いまなお需要は高いようで、その中古車としての市場価格も年々上がっています。その993の市場、そして魅力をおさらいしてみましょう。また、中古車を買う時の注意点も深く掘り下げます。

もし最高の「モダン」な911をまだ安い中古車のうちに入手したいと思っているなら、それはもう遅過ぎる。中古販売広告には10,000ポンド(約175万円)の911が溢れてはいるが、それはすべて993より新しいモデル。すべての911の中でも最も信頼性が高く、個性豊かで実用性の高い993は、一瞬でコレクターにさらわれてしまうようになりつつあるのだ。ハーム・ラガーイと英国人トニー・ハッターがデザインしたこのクルマは、トラクションと強烈なトルク、新たにダブルウィッシュボーンとなったリア・サスペンション、愉快な操作感の6段トランスミッションに加え、見事なパッケージングと実用性で最高の賞賛を浴びた。もちろん、エンジンの極上サウンドも忘れてはならない。

まだクラシックなダッシュボードとフロアにヒンジを持つオルガン式ペダルを使っているこのクルマが、当時としては最新技術を満載したスーパーカーであり、ABSやパワーステアリング、電動アシスト付きのシートやウィンドウやルーフ、そしてセンターロック、アラーム、ツイン・エアバッグ、さらに本革のトリムを備えている。エアコンもカブリオレ以外の全モデルで標準装備だった。

製造されたのはわずか5年間だが、993には選択に迷うほど多くのバリエーションがある。自然吸気とターボ、2輪駆動と4輪駆動、クーペとタルガとカブリオレ、6段マニュアルと4段ティプトロニック・オートマティック。さらにポルシェはホイールの選択やサスペンションの設定、シートのスタイル、内装のトリム、エクステリアの塗装色に至るまで、すべて多様な選択肢を用意していた。



錆びやすい箇所 (1) フロントのトランク・フロア、特にバッテリー周囲 (2)前後のブレーキ・キャリパー (3) ウィンドスクリーン周り、特にスカットル上(ゴムを剥がして点検) (4) Aポストのドア・チェック・ストラップ取付部 (5) パワーウィンドウ (6) リア・スクリーン周り(ゴムを剥がして点検) (7) リア・シャシー脚部 (8) リア・バンパーサポート・パイプ (9) サイレンサーの熱シール

新車の時には、電動ルーフのカブリオレは温かく迎えられた。剛性感は印象的なもので、普通ならオープンカーの持病であるはずの振動は何もなかった。このカブリオレのボディ・シェルを使って造られたタルガはさらに剛性が高かったが、代わりに60kgの重量増を招いていた。グラス・ルーフが電動でリア・ウィンドウの内側にスライドする構造だったのだ。しかし中古ではモノコックが疲労して、今ではたわみやきしみ音が発生するまでになっている可能性も予想される。やはり純粋主義者ならクーペを選択すべきだろう。4輪駆動のターボは驚異的に速くて実力もあり、批判するとしたらあまりにも良すぎるというだけで、そう言われるほどグリップも傑出している。たとえ2輪駆動のカレラでテール・スライドが可能な手練でも、こちらのテールを滑らせることはまず不可能だろう。

米国仕様のグラウンド・クリアランスは120mmで、欧州仕様は110mm、さらにスポーツ・シャシー仕様(これには標準の16インチではなく17インチのホイールが付く)では90mmまで低くなる。登場当時としては最新技術だったのだが、パワーロスがありギア・チェンジにステアリング・ホイールのボタンを使うティプトロニック・トランスミッションはエンスージァストの間では敬遠されがちだった。新車ではこちらの方が高価だったのだが、現在ではオートマティックは値を下げている。95年に導入されたバリオラム吸気システムはバランスの補正に効力があり、動力性能と燃費の両方を改善している。

どの個体であれ、このクルマではまず点検すべき事がある。自動車登録番号が刻まれたボンネット下のコードを比較し、点検記録簿と、さらに(後期モデルでは)運転席ドアの閉まり具合だ。

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