意図したエンジニアの「広告塔化」なぜ? 自動車メーカーの狙いとは
公開 : 2018.03.21 18:10 更新 : 2021.03.05 21:36
すぐれたクルマを生み出してきた無名のエンジニアたちに、メーカー自身がスポットライトを当てようとしています。そういったトレンドといってもいいでしょう。おそらく1度は、エンジニアが紹介動画で熱弁する姿を見たことがあるでしょう。なぜか。真意をさぐります。
もくじ
ー 「ギーク・シック」という言葉
ー 脚光浴びる技術者 特徴は
ー 1930年に一例も いわば「大使」
ー 技術者を会社の顔にすえるワケ
ー 番外編 「大使」として活躍する4人
「ギーク・シック」という言葉
ガラクタまがいのものばかり長年いじくってきたオタクたちが、いきなり流行の最前線に引っぱり出された。
彼らはもう、レンズの分厚いメガネをかけて引きこもり、おでこを光らせてコンピュータにかじりつくよくある根暗オタクじゃない。突然にして、まるでイケメン男子を見るようなまなざしの的となった。
世間の風向きがそんなふうに変わったのは、それを簡潔にあらわす「ギーク・シック(geek chic)」という語句が2013年にオックスフォード英語辞典に収められたあたりからだ。ちなみにその意味は「コンピュータや電子技術のマニアが好む、現代風でスマートとされる服装、身だしなみ、文化のこと」。かつては不器用であか抜けず、気にもとめられなかった彼らが、いきなり頂点に持ち上げられたのだ。
そうして彼らがいまやスポットライトを浴びる立場になったのと時をおなじくして、自動車の世界でもふつうではないことが起ころうとしていた。
たしかにあと付けで見れば、コンピュータオタクの台頭には意味があった。たとえばガーディアン紙の2013年の記事にあるように、「デジタル技術の進化は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツのようなインテリオタクに空前の権力と影響力をもたらした」のだ。
新しい技術に懐疑的なひともかつては多かった。それでも、いまではその輝ける技術の結晶をみんな当たり前のようにポケットに入れていることを思えば、完全に受け入れられたと考えるのが自然だろう。それほどコンピュータ技術はわれわれの日々の生活の根幹に深く入りこんでいる。陰でその技術を作りあげたひとたちは、だからなるべくしてスーパースターになったのだ。