ポルシェ919エボ ニュルブリンク最速ラップの裏側 35年ぶりの記録更新

公開 : 2018.07.16 21:10

35年ぶりにニュルブルクリンクのコースレコードが更新されました。5分19秒546という驚異的なタイムを記録したのは、昨年レースシーンを引退したポルシェ919をベースに誕生した919エボです。この素晴らしい新記録は、35年前の記録の偉大さも改めて浮き彫りにしています。

もくじ

5分19秒546 とてつもない記録
スパでも記録更新 最高時速369km/h
記録達成の秘密 ベロフの偉大さは変わらず
番外編:ベロフの記録

5分19秒546 とてつもない記録

残り1分となり、電光掲示板の周りは静寂に包まれていた。カメラの準備が整う一方で、話し声は一切聞こえてこない。ポルシェ・レーシング部門のトップであるアンドレアス・セイデュルは、緊張した笑みを見せながら、その様子をそばで見つめている。

最初にエンジンサウンドが聞こえて来た。それは、決して多気筒エンジンが奏でる、芸術ともいえる美しい調べなどではなく、小排気量の4気筒エンジンとハイブリッドシステムの組み合わせが発する、単調な騒音だったが、むしろ、その目指すところには相応しいサウンドに思えた。

最後の右コーナーを通過したティモ・ベルンハルトは、ポルシェ919エボでコンマ1秒でもさらに削り取ろうとするかのように、縁石ぎりぎりを攻めていた。最後にエンジンの咆哮が再び聞こえたかと思うと、ゴールラインを突き刺すように通過したその直後、電光掲示板の数字が止まったように見えた。


最初にデジタル表示が現れた時には間違いだと思った。これまで、ニュルブルクリンクでは一度も見たことのない数字だったからだ。これに近いタイムすら見たことがなかった。しかし、やっと何が起きたのかが理解できた。とてつもない記録であり、歴史がつくられた瞬間だった。ニュルブルクリンクのノルドシュライフェを5分19秒546というタイムで走り抜けたのだ。

別の角度から見てみよう。ニュルブルクリンクは、スパ・フランコルシャンやル・マン、モンツァのような高速サーキットではない。しかし、この約320秒の間、ベルンハルトを乗せた919は、この世界で最もチャレンジングなサーキットを、平均時速234.0km/hで周回した。時間が経てば、この数字を理解することが出来るだろうと思ったが、それも無理の様だ。わたし自身、このコースを数百周はしているが、2018年6月29日の晴れた朝に記録された、このとてつもない数字の意味を正確に理解することなど、決してできないだろう。

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