AUTOCARロードテスト90周年(5) インテリア、どう変わった? 混沌の歴史
公開 : 2018.12.16 11:40 更新 : 2018.12.16 16:51
インテリア90年の進化を振り返ってみました。ペダルレイアウトさえ決まっていなかった1920年代から、新素材の登場や安全規制の強化などを経て、いまやマルチスクリーンなしには成り立たなくなったインテリアですが、この先どのような進化を見せてくれるのでしょうか?
もくじ
ー スタートは混沌から
ー 新素材登場 安全性が重要に
ー キャビンスペースは狭く 魔法は期待できず
ー 機能性が重要 マルチスクリーンは必須
ー 番外編:年代別インテリア
スタートは混沌から
1928年には人間工学など存在しておらず、当時のクルマのキャビンは混沌の世界だった。ダッシュボードには所かまわずパイプや配線を通すための穴が開き、スイッチ類はバラバラに配置され、ペダル配置さえモデルごとに違っていたのだ。
その驚くべき前輪駆動システムはさておき、アルヴィスのFA 12/50は当時を代表するモデルだ。当時AUTOCARのスポーツ編集担当だったサミー・デイビスは、1928年にこのモデルでル・マンに参戦しているが、ブレーキとクラッチの間に配置されたアクセルペダルには苦労させられ、ドライバーに近すぎるステアリングホイールのせいでレース中は食事にも苦労した(実際に運転したことがあるのだから、間違いない)。
1930年代に入るとキャビンレイアウトにも変化が生じ始めた。アクセルペダルの位置は右側が一般的になり、主な計器類は視認性を考慮してドライバー正面へと移動している。しかし、英国メーカーのなかにはなぜかこの動きに反して、1950年代以降も計器類をダッシュ中央に配した左右対称のレイアウトを採用し続けるところもあった。
黎明期に登場したクルマの多くがダッシュボードの材質にウッドを使用していたが、時代が下るにつれこうした材料にも変化がもたらされている。モーリス8シリーズのEが採用した茶色のベークライト製ダッシュボードに代表されるように、大量生産の合成素材がスタンダードとなる一方で、伝統素材は高級モデル向けとして、堅牢性とクラフツマンシップ、そして古く良き価値を体現するものとなった。
ステアリングコラムの支持以外にも、ファイバーグラス製ボディの堅牢性にも寄与していた合板製ダッシュボードを持つロータス・エランを除き、1960年代にはウッド素材がダッシュボードの構造部材として使われることはなくなった。ウッド素材は主に装飾用となるとともにフェイクウッドの使用も始まっている(1990年代のフォード車に見られるTimberlexが良い例だ)。だが、1960年代当時も、フェラーリやアストン、ジャガーEタイプといったスピードを誇る高級モデルでも、ウッド製ダッシュボードを採用することはほとんどなかったのだから問題はないだろう。