デザイナー、イアン・カラム ジャガー新時代の立役者 惜別の独占インタビュー
公開 : 2019.06.22 18:50
今月末でジャガーのデザイン責任者を退任することが発表されたイアン・カラムの独占インタビューです。ジャガーに新時代をもたらすとともに、数々の伝説を残した彼が次に目指すのは、ひとりのデザイナーとしての姿であり、今後のカラムからも目が離せません。
もくじ
ー 突然の退任 奇妙な偶然
ー ひとりのデザイナーとして
ー 数々の伝説 夢を実現
ー 素晴らしい功績 常に前進
ー 番外編1:すべてはここから
ー 番外編2:カラムが救ったアストン
ー 番外編3:カラムが選ぶ ジャガーのスター
突然の退任 奇妙な偶然
ジャガーのデザイン責任者、イアン・カラムが午後の休憩を楽しんでいるのは予定外の行動だった。
2000年代初め、もっともそれが必要とされていた時期に、ジャガーに新たな方向性を与え、さらには、まったく新しいスタイリングを持つモデルレンジを創り出すことに成功したカラムだが、もともとのスケジュールでは、午前11時からフェン・エンドにあるジャガー・ランドローバー(JLR)のテストコースで、写真撮影を行うことになっていた。
そのため、彼は重要なエンジニアリングに関するミーティングを抜け出してきたのであり、撮影が終われば、同じようなミーティングへと戻ることになっていたはずだ。
だが、撮影が開始された途端、まるで壊れた目覚まし時計のように、次々とカラムの携帯電話がけたたましく鳴り始め、それはわたしも同じだった。
おそらく、64歳のカラムが1年間考え続け、昨年のクリスマスには決断をしたものの、その後5カ月にわたり、誰にも打ち明けることのなかった、今年6月末でジャガーのデザイン責任者を辞め、新たな挑戦を始めるという情報が、メディアに伝わったに違いなかった。
報道のとおり、カラムの後任は18年間ともに仕事をしてきた友人のジュリアン・トムソンであり、現在、ジャガーでクリエイティブデザインディレクターを務め、革新的なコンセプトを持つ彼は、カラム同様、ジャガーの歴史と価値に新たな風を吹き込んだ人物でもある。
実は英国版Autocarでは、ジャガー内部筋からの情報によって、数週間前にはカラム退任のニュースを掴んでおり、だからこそ、彼の写真撮影にあたっては、20年前にカラムと彼のデザインチームがウィットレーにあるジャガーのデザイン本部に着任して以降に登場し、大きな反響を呼んだ、特別な11台を用意することにしたのだ。
奇妙な偶然だったが、コベントリーにほど近いフェン・エンドにあるプルービンググラウンドの、いまでは使われていない誘導路の真ん中に、カラムが11台の車両とJLRのスタッフ、そして英国版Autocarのクルーとともに立った瞬間、彼の退任のニュースが明らかとなった。