廃車と引き換え、新車に助成金 スクラップ・インセンティブ 英自動車業界を救った制度
公開 : 2019.06.23 11:50 更新 : 2019.06.23 12:29
およそ10年前、スクラップ・インセンティブという制度が金融危機に苦しむ英国自動車業界を救いました。古いクルマの廃車と引き換えに新車購入に対し計2000ポンドの助成金を出す施策により、ショールームに行列ができるほど多くの新車が売れました。
もくじ
ー 自動車業界を金融危機から救った
ー 懐疑的な政府を説得
ー ヒュンダイの素早い対応
ー 売れすぎで保証金返還も
ー 高級車は恩恵小
ー 安全かつエコなクルマが普及
ー 番外編:ヒュンダイi10 どんなクルマ?
自動車業界を金融危機から救った
2009年4月は英国自動車業界にとって悲惨な時期であった。2008年のリーマン・ブラザース破綻をきっかけとして起こった金融危機により、各銀行の経営も悪化し、自動車の売り上げも大きく落ち込んだ。
結果として、その1年間を通して新車販売は振るわず、2009年第1四半期には30%も減少した。英国での自動車生産台数は57%もの落ち込みを見せている。しかし、それからちょうど1カ月後にはディーラーが整理券を発行しなければならないほど大盛況になるとは誰が予想しただろうか。
このカギとなったのはスクラップ・インセンティブだ。自動車業界を活気づけるため、新車への買い替えを促す制度である。当時から今にいたるまで賛否両論あるこの制度だが、一部のメーカーはこのおかげで40万台ほどの売り上げに成功したともいわれている。
これはどんなものなのだろうか。中心となった立案者は自動車製造販売協会を率いるポール・エヴァリットだ。「自動車の販売は経済のバロメーターであり、当時は毎月のように新車登録が減少していました」と彼はいう。「底の見えない金融危機の中、ゴードン・ブラウン率いる政府はこの流れを変える施策を検討していました」