フェラーリ最高技術責任者に訊く なぜハイブリッド? 次のハイパーカーは?

公開 : 2019.08.13 00:05  更新 : 2019.08.13 00:06

フェラーリ最高技術責任者のマイケル・ライターズに、SF90がハイブリッドを採用した理由や、EVフェラーリの可能性、次のハイパーカーの計画などについて訊きました。

SF90にハイブリッドを採用した理由

フェラーリは、2023年までに15台の新型車を発表すると2018年9月に約束した。現在その1台目を発売する準備に取り掛かっている。それらすべての開発を指揮する立場にある人物こそ、2015年にフェラーリに加わったCTO(最高技術責任者)のマイケル・ライターズだ。われわれはマラネロを訪れた際、彼とテーブルを囲んで話を聞いた。

ーーフェラーリは間もなくSF90ストラダーレを発売します。なぜ、このクルマをハイブリッドにしたのですか?

フェラーリCTO マイケル・ライダース
フェラーリCTO マイケル・ライダース

「次のステップに進むためにはハイブリッド・テクノロジーが重要であると、われわれは確信しています。ハイブリッドは内燃エンジンの代替と考えられていますが、われわれが本当に求めたのは四輪駆動に使えるということです(SF90は2基の電気モーターが前輪を駆動する)」

「四輪駆動にする利点はたくさんあります。単に0-100km/h加速が速くなるだけではなく、非常にスポーティなクルマに仕上げることができます。四輪駆動のスポーツカーを作るために、ハイブリッドの採用を決めたのです」

ーーなぜ、単なるハイブリッドではなく、プラグインにしたのですか?

「ある瞬間には大パワーを求めても、別の状況では静かに走行したいと思うこともあるはずです。例えば早朝に家を出るとき、壮大な排気音を撒き散らしたいとは思いませんよね」

重量増を補って余りあるメリットとは

ーーSF90ストラダーレの位置づけは?

「フェラーリには488と812がありますが、これらとは重ならない新しいセグメントを作りだす余地があることをに気付きました。そこで812を超えるパフォーマンスと、488にはない新しい特徴を持ったクルマ作りだそうと考えたのです。488や812はハイブリッドでも四輪駆動でもありません」

フェラーリSF90ストラダーレ
フェラーリSF90ストラダーレ

「そこでわたしたちは、新たなセグメントを定義しました。スポーツカーの最上位となるセグメントです。それが可能だと考えていますし、最初から肯定的な反応を得られています」

「われわれにとって、30万ユーロ(約3600万円)を超えるトップ・セグメントの顧客を掴まえることは困難でした。この価格帯のクルマを購入される方は大抵ミドシップのクルマをお求めになります」

ーーハイブリッド化による重量増についてはどのようにお考えですか?

「痛いですよ! ハイブリッド・システム全体で250kgの重量増になります。250kgも相殺することは明らかに不可能です。ボディやシャシーにカーボンファイバーを多用したり、あるいはリバース・ギアを省略してモーターを後退時に使用するとか、小さなことを積み重ねて、少しずつ重量を抑えるしかありません」

「軽量化によって得られる利点はそれほど多くありません。まず、アクセレーション(加速性能)ですが、それも1000馬力もあれば問題になりません。次にアジリティ、つまり車両がどれだけ素早く反応するかという点に関しては、重量と慣性によって決まります。より重要なのがホイールベースです。ホイールベースを伸ばさず、慣性を抑えることが何より重要です。だからSF90のホイールベースはF8と変わっていません。次に大事なことは、重心の低さです。エンジンは非常に低い位置に搭載されています」

「そしてフロント・アクスル。2基の電気モーターと配線を合わせると65〜70kgほどです。しかし、トルクベンタリングが可能になりますから、これは200〜210km/hでコーナリングする際に、約200kgの軽量化と同等の効果が認められます」

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