走る奇妙なオレンジ? アウトスパン・ミニ試乗 最高の宣伝カー 後編
公開 : 2019.09.01 16:50
実際に走らせてみると意外な活発さを見せるアウトスパン・ミニですが、スピードは控え目にしておいた方が良さそうです。それでも、じっくり観察してみればさまざまな発見のあるこのクルマ最高の魅力は、道行くひとびとの誰をも笑顔にするそのキュートさです。
意外にも活発 奇妙な安らぎ
走り出してみると、驚いたことにこのオレンジはシャープなステアリングによって、スタンダードなミニを思わせる活発なコーナリングを見せ、少なくとも低速であればその切り詰められたシャシーは思いのほかアンダーステアにも強い。
だが、さらにスピードを上げると(このシルクハットを被ったまま乗り込むことのできるオレンジの場合、50~60km/hも出せば十分なスピードだと感じられる)、新聞のヘッドラインを飾るほどの事故に繋がり兼ねない、激しいピッチングに見舞われることになる。
このオレンジが転がって、まるでボーリングのピンへと突き進む巨大な柑橘類へと変貌する様子を想像するのは簡単だろう。思わず笑わずにはいられないが、残念ながらシートベルトで固定されたドライバー以外、すべてのパッセンジャーはまるで乾燥機に放り込まれた靴下のように、肉厚のパッドに覆われたキャビンのなかを転がり廻ることになる。
だが、観衆を楽しませる必要が無ければ、このオレンジはつねに姿勢を保ち続け、まるで母親の胎内にいるかのようなオレンジ色をした世界は、転倒の危険や強烈な我慢を強いられるそのスピードにもかかわらず、奇妙な安らぎさえ感じさせる。
スピードには注意 誰もが笑顔に
60km/hを大幅に超えるような速度は、このオレンジをジューサーにかけるようなものであり、このクルマのドライビングを楽しみたいなら、速度は50km/h以下に留めておくべきだろう。
それでも、こうした多くはその外観だけでは分からないことであり、より注意して観察することで、より多くのことが見えてくるのだ。
緑色をしたファイバーグラス製の茎が生えている辺りのルーフはへこんでおり、凹凸に覆われたオレンジの外皮に関して、グランピアン交通博物館でこのクルマを展示している所有者のサンディ・デルガルノは、「このディンプルのお陰で、洗車には非常に時間が掛かります」と話している。
一方、このフルーツのサイケデリックな胎内へと侵入するためのドアハンドルは、手の平一杯の大きさをしたグラスファイバー製のオレンジだ。
見慣れたミニの四角いテールランプがそのリアに違和感なく取り付けられ、カバーで覆われたヘッドライトはガラスのほとんどがオレンジに着色されており、以前はフロントウインドウも同じくオレンジ色だったが、いまや、かつてのようにドライバーに明るい世界を見せることは法律が許さなくなっている。
だが大丈夫だ。これまで運転したことのあるクルマのなかで、これほど多くのひとびとを笑顔にし、驚かせ、慣れない手つきでスマートフォンで写真撮影をしようと慌てさせるとともに、好意的な視線を送られたことはなかった。
オレンジにとってはまさに最高の宣伝だろう。