スバル「EJ20」エンジン、30年の歴史に幕 なぜ30年も継続使用? 名機と呼ばれるワケ
公開 : 2019.09.25 11:05 更新 : 2021.10.13 13:59
スバルは「WRX STI EJ20 Final Edition」を発表。そう、名機といわれるEJ20エンジンが30年の歴史を終えるのです。回顧しつつ、名機となった理由を小鮒康一が探ります。
「EJ20」エンジン ついに引退のとき
スバルの東京モーターショー出展リストのなかで、スバルのファンであれば看過できない文字列があったことに、すでにお気づきのことだろう。
それは「WRX STI EJ20 Final Edition」の文字だ。
ここで言う「EJ20」とは、現在のスバルWRXに搭載されている1994ccの排気量を持つ水平対向4気筒エンジンのこと。
1989年1月に登場した初代レガシィに初めて搭載されて以来30年、インプレッサやフォレスターなどのスバルの名だたる名車に搭載され続けてきた名機だ。
生産開始からカウントすれば昭和/平成/令和と3つの時代を渡り歩いたエンジンだったが、ついに世代交代をするときがやってきたということになる。
なお、レガシィ登場以前のレオーネの時代はEA型と呼ばれるエンジンが主力であったが、これは1966年にスバル初の普通乗用車として登場した、スバル1000に搭載されていたものを改良し続けて使用している。
1つのエンジンを長期間かけて熟成させているのだ。
それではここからは30年もの歴史を誇るEJ20型エンジンを振り返ろう。
EJ20の30年の歴史=進化の歴史だった
前述した通り、EJ20は1989年1月に登場した初代レガシィに初めて搭載されたエンジンだ。
そのバリエーションはDOHC16バルブノンターボの150ps仕様とDOHC16バルブインタークーラーターボ付の220ps仕様が用意されていた(ほかに1.8Lもあり)。
スバルとしては初めて200psオーバーのエンジンとなり、ワゴン+200psオーバー+フルタイム4WDと言うキャラクターで大ヒットした。
そして92年にはレガシィよりも、ひと回り小さいボディを持つインプレッサにもそのエンジンが搭載される。
スバルは当時レガシィでWRC(世界ラリー選手権)に参戦していたが、よりコンパクトで機動性に優れるインプレッサにベース車を移すためでもあった。
ネガ、時間かけてリファイン 実戦でも
デビュー当初の評価としてはエンジンの構造上、低回転域でのトルク不足を指摘されたり、馬力もカタログスペックよりも体感するパワー感が物足りないという意見も散見された。
また、どちらかというと高回転型のエンジンということもあり、燃費の面でもドライバビリティの面でも、当時のライバルだったランサー・エボリューションのエンジン(4G63型)に一歩及ばない、というのが当時の偽らざる評価だった。
しかし、ネガな部分が目立っていたエンジンを時間をかけてリファインした。
低速トルクだけでなくピークパワーも上げ続けて行った結果、現行型のWRX STIでは308ps/43.0kg-mという出力を得るまでに至った(2005年に登場した限定車、S204では320ps/44.0kg-mを達成)。
当時はそこまで大きな会社ではなかったスバルとしては、やはり「不利は承知」でWRCなどの実戦の場でEJ20を使い続けなければいけない状況があったのかもしれないが、そういった現場を経てキッチリ仕上げてくるところは技術屋集団といったところだろう。
現在のWRX STIに載るEJ20は初期のものに比べると別物のようなピークパワーやトルクに溢れているが、出力特性は今でも「アクセルを踏み込んで炸裂する」というもの。
現在の主流である直噴ターボエンジンに見られるアイドリング+αからトルクが立ち上がるというフラットな特性ではなく、高回転高出力型の男らしい気骨に溢れたフィーリングは不変となっている。
これはこのエンジンをリファインしていくことしかないからこその、研ぎ澄まされたフィーリングであり、それが30年間研鑽され続けたEJ20の魅力と言えるのかもしれない。