シトロエン誕生から1世紀 英国編集部の記憶に残るシトロエン 12選 前編
公開 : 2019.12.01 07:50 更新 : 2021.03.05 21:43
今から100年前に誕生し、大胆なビジネス展開でフランスの自動車業界に影響を与えたシトロエン。英国編集部のスタッフにとっても、いつもシトロエンは気になる存在です。実際に乗るならどんなクルマが良いか、選んでみました。
表向きは派手だったアンドレ・シトロエン
シトロエンを立ち上げたアンドレ・シトロエンは、自動車史の中で最も並外れた人物の1人。当時彼は、ヨーロッパで最も有名なビジネスマンの1人でもあった。
自動車業界でのキャリアは比較的短かったアンドレ・シトロエンだが、彼が行ったマーケティングの多くは、自動車大手によって模倣されている。シトロエンが一番初めに、他よりも盛大に、よりよく華やかに実行した。
エンジニアとしてキャリアを積んだものの、腕のいいメカニックではなかった。後にオースチンを立ち上げたハーバート・オースチンは、列車旅行の車内でフロントアクスルのアイデアスケッチを描いたし、モーリスを立ち上げるウィリアム・リチャード・モーリスも、ゴルフ場の駐車場で、友人のキャブレター調整を楽しんだ。
アンドレはといえば、街を闊歩し、どこかのカジノで派手にギャンブルを楽しむようなタイプだった。とはいえ、彼のギャンブルでの勝率は高かったらしく、実際は慎重なギャンブラーだったようだ。
シトロエン一家は間違いなく裕福な暮らしをしていたはずだが、彼はパリ市内に自宅も持たず、リゾート地に別荘も構えなかった。優雅なヨットも持たなかった。野心的なビジネスマンではあったが、会社から得ていたものは、控えめだったモーリスの社長より少なかったらしい。
家族のような関係でビジネスを構築
自動車メーカーのシトロエンは、彼の人生そのもの。会社の利益を改めて会社へと投資するという姿勢は、商業的に成功する上で必要な、自然な行動でもあった。
アンドレは多彩でダイナミックで、予算の使い方も大胆。広告に対する生まれながらの才能を備えていた。知性的で論理的、記憶力にも極めて優れていた。また即行動に移すタイプで、それが常に正しい直感ではなかったにしろ、磨かれた内容で実行に移された。特に新規性には強く惹かれるタイプだった。
彼が部下へ指示を出すときは常に簡潔さに気をかけた。親しみやすくリラックスした雰囲気を作った。同時に会社のトップとして長時間働き、日常的に工場の組立ラインを見て歩いた。そこから醸成した忠誠心こそ、シトロエン成功の鍵だったといえる。
彼に近い人物へ、大家族の一員であるかのように感じさせることで、資本支援を得るとともにビジネスを構築していった。年末の恒例だった、ディーラーや販売店を交えての晩餐会もその1つ。多くの人の忠誠心を保つために支払った、小さな代償だ。継続的な資金調達の面でも重要だったはず。
そんなアンドレ・シトロエンが築いたシトロエン。熱烈な自動車ファンが集まる英国編集部にも、シトロエンを所有する喜びを味わったスタッフがいる。どんなモデルを過去に楽しんできたのか、あるいは欲しいのか、ご紹介しよう。沢山のメンテナンス費用は、少し脇においておこう。