【F1】ルイス・ハミルトン 英国最高のアスリートなのか? 実像に迫る 前編
公開 : 2019.12.08 10:50
今年6度目のF1ワールドチャンピオンのタイトルを獲得したルイス・ハミルトンですが、この稀代のF1ドライバーに対しては地元英国でもさまざまな評価があるようです。今回はそんなハミルトンの実像に迫るべく、彼のこれまでのキャリアを関係者とともに振り返ってみました。
英国最高のアスリート?
もっとも偉大な英国のアスリートとは誰だろう?
4度ツール・ド・フランスを制したクリス・フルームや、オリンピックで4つの金メダルを獲得したモハメド・ファラーなど、多くの候補が上がるに違いない。
オリンピックチャンピオンであり、世界選手権を8回制するとともに2度世界記録を樹立した水泳のアダム・ピーティーと、2度のオリンピックと3度の世界選手権チャンピオンである体操のマックス・ウィットロックを忘れるわけにはいかない。
スヌーカーのロニー・オサリバンは5度世界チャンピオンの座に輝いており、アンディ・マリーはグランドスラム3勝と、ロンドンとリオでふたつのゴールドメダルを獲得している。
さらに、カタリーナ・ジョンソン・トンプソンは7種競技の世界女王であり、イングランド・ラグビーチームのキャプテンを務めるオーウェン・ファレルは世界最高のラグビー選手のひとりに数えられている。
ラヒーム・スターリングも世界最高のフットボーラーのひとりであり、さらにはプロゴルファーのローリー・マキロイなど、英国からは数多くの偉大なアスリートたちが登場している。
そして、もちろんルイス・ハミルトンだ。
6度のF1世界チャンピオンと83勝という記録を上回るのはミハエル・シューマッハーだけであり、87回という歴代最多のポールポジション獲得数を誇るハミルトンは、13年間に渡って最速のレーシングドライバーの座を維持しており、いまなお現役を続けている。
ハミルトンのことを、英国でもっとも偉大なアスリートの座には相応しくないと考えるひともいるかも知れないが、こうした記録を無視するわけにはいかないだろう。
真の能力
ハミルトンほどデビュー直後に強いインパクトを残すだけでなく、これほど長きに渡って高いパフォーマンスを維持している英国人アスリートなどほとんどいない。
ルーキーイヤーのF1ドライバーが、世界タイトル獲得を争ったり、世界チャンピオンを向こうに回してコンスタントに熾烈な戦いを繰り広げるなどということを想像したものはいなかった。
だが、2007年にマクラーレンからF1デビューすると、ハミルトンはまさにこうした想定外の活躍をしてみせたのであり、彼のチームメイトは当時すでに2度のF1チャンピオンに輝いていたフェルナンド・アロンソだった。
デビュー直後から高いパフォーマンスを発揮すると、早くも参戦6戦目にはF1初勝利をあげており、ドライバーズタイトル獲得まであと一歩のところにまで迫っている。
歴史に残る素晴らしいデビューシーズンを過ごした後、10年以上に渡ってハミルトンは時に天才的とも言える、安定した見事なパフォーマンスを発揮し続けており、彼はデビュー以来参戦したすべてのシーズンで勝利を上げている唯一のF1ドライバーだ。
メルセデスチームでテクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンは、シューマッハーやアロンソ、さらには4度世界チャンピオンのタイトルを獲得しているセバスチャン・ベッテルとも一緒に仕事をしたことがあり、ハミルトンの能力を判断することのできる稀有な人物のひとりだ。
「もし、彼ら全員が毎年同じチームで戦ったとしたら、おそらく最後にトップに立つのはハミルトンだと思います。毎シーズンではないかも知れませんが、それでも大抵シーズン最後にトップに立っているのはルイスになるはずです」とアリソンは言う。
「このなかでルイスが最速です。そして彼はつねに最高のパフォーマンスを見せてくれます。彼がポールポジションの獲得数でトップに立っているのも偶然ではなく、それはコーナリングスピードが誰よりも速いからなのです」