【ポルシェの将来】911のEV化? タイカンの次世代911化? VWグループの出口戦略、手探り
公開 : 2019.12.31 11:50 更新 : 2021.10.09 23:53
ポルシェ初のEV(電気自動車)、タイカン。各国での報道を見てみると、両手を挙げて絶賛するような記事は多くありません。911をEV化するのではなく、次世代911と呼ぶにふさわしいEV構築。うまくいく?
ポルシェ初のEVタイカン 表現に困るメディア
ポルシェ初のEV(電気自動車)、タイカン。
2019年後半に国際試乗会が行われるなど、世界主要国のメディアがタイカンを体験した。
各国での報道を見てみると、両手を挙げて絶賛するような記事は少ない。かといって、ネガティブな意見をいうジャーナリストも少ない。多くの場合、新たなる感覚に対して戸惑い、どのように評価し、そして表現するべきなのか困っているように思える。
根源にあるのは「これは、ポルシェなのか?」という点だ。
タイカンは、確かに速い。0-100km/h加速は2.8秒(欧州参考値)だが、「人とクルマが遠い」という表現をよく見かける。
言い換えると「これまでのポルシェっぽくない」ということだ。
「ポルシェっぽくない」という点では、SUVに参入したカイエン、またフル4シーターのパナメーラと、ポルシェが事業を拡大する度にメディアから聞こえてきた声だ。
だが、タイカンに対する「ポルシェっぽくない」とは、911を対象としている。
つまり、タイカンを「次世代ポルシェのフラッグシップになり得るクルマではないのか」という気持ちをメディアが持っているということだ。
次世代911は? VWグループ明確な出口戦略を
いま、世の中で起こっているのは、EV市場の二極化だ。
1つは、日産リーフに代表される顧客層が多いマスマーケット向けのEV。一般的にはプレミアムEVと思われているテスラも、実はマスマーケット向けの商品だ。
エントリー車種のテスラ・モデル3はもとより、モデルSやモデルYもライバルはレクサス、インフィニティ、アキュラなどだ。
テスラは、ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニなどハイエンドなプレミアムブランドではない。
筆者(桃田健史)は2018年初頭、ドイツで開催された次世代車向け電池の国際学会で、当時最終的なテスト走行を繰り返していたタイカン(この時点ではコンセプトモデルのミッションe)のシステム設計チーフエンジニアと意見交換した。
その際、彼の言葉からは、タイカンは、テスラ顧客はターゲットユーザーの一部ではあるが、モデルSをライバルに想定していないように感じた。
常識破りの800V充電の実用化も「ハイエンドなプレミアムブランドを構築するための手段」と表現した。
ポルシェが目指しているのは、911をEV化するのではなく、次世代911と呼ぶにふさわしいEVモデルの構築である。タイカンは、その大きな実験だ。
だが、当のポルシェもタイカンが、ズバリ次世代911的な存在と言い切れるだけの自信はないだろう。
なぜならば、EVを含め自動車技術の大変革の中、ポルシェとして、そしてフォルクスワーゲングループとして明確な出口戦略が見い出せず、手探り状態が続いているからだ。