【FF最速……だけじゃなかった】新型メガーヌR.S.トロフィーRの狙いとは 前編

公開 : 2020.01.05 18:50  更新 : 2021.10.09 23:32

東京オートサロンに展示される「新型メガーヌR.S.トロフィーR」。ラップタイムだけがひとり歩きしがちですが、FF最速の称号だけではない、もう1つの狙いがありました。

シビック・タイプRの作戦

text:Kazuhiro Nanyo(南陽一浩)

2019年11月末日。鈴鹿サーキットで新型メガーヌR.S.トロフィーRが、テストドライバーであるロラン・ウルゴンのドライブで2分25秒454を叩き出したことは、方々で報じられている通り。

遡ること半年前の2019年5月には、ニュルブルクリンク北コースで7分43秒80というそれまでシビック・タイプRがもっていたFF最速のタイトルを、7分40秒100で奪い返した。それも、この新しいトロフィーRとロラン・ウルゴンの仕業だった。だがそれは、ホンダに対してルノーがリベンジを果たした、という単純な結論ではない。

新型メガーヌR.S.トロフィーR
新型メガーヌR.S.トロフィーR

スポーツの考え方として、タイムアタックとはいえホンダが欧州に出張ってくるのは「アウェー」の闘いを強いられている訳で、ルノー・スポール側がホンダの「ホーム」、つまり鈴鹿にも出向いていって、ようやく双方の条件が揃うイーブンといえる。

だからこそ、6年前の2014年の同じ時期、先代メガーヌR.S.の時代から、ルノー・スポールは同じように鈴鹿サーキットでもタイムアタックを行った。その時は3世代目のメガーヌR.S.トロフィーRで、ロラン・ウルゴン自身が、2分28秒465を記録した。

対してホンダとシビック・タイプRは2017〜18年にかけて、アウェーで暴れ回るという戦線拡大の戦略を採った。

ルノー・スポールの闘い方は?

シビック・タイプRは、スパ・フランコルシャンやシルバーストン、エストリルなど欧州の主要サーキットでジェンソン・バトンまで起用して、続々とFF最速ラップ・レコードを打ち立てまくるという、なかなか天晴れな挑発にして全面戦争だった訳だ。

現行のメガーヌR.S.が出たばかりの頃から、タイムアタックはどうするのか? と、ルノー・スポールのディレクターであるパトリス・ラティ氏に、機会あるごとに訊ねてはいた。

新型メガーヌR.S.トロフィーR
新型メガーヌR.S.トロフィーR

いつも異口同音の答えは、やらないでもないけど、どうやるかが問題だ、というものだった。

今にして思えば、全面戦争にのってあちこちで予算をかけるより、少ない手数で効果的にやるにはどうするか? そこを練っていたのだろう。

この辺りにルノーが大衆車メーカーでありながら、長らくF1を続けられている秘訣があると思う。

というわけで、第4世代メガーヌR.S.トロフィーRが、ニュルとスパと鈴鹿に集中して、以前と同じく一番時計を制しても、ルノー・スポールの経営陣はそこに繰り返しの匂いを嗅ぎ取ったのだろう。

単なるリベンジ合戦に陥らずに、モータースポーツを促すというミッションを鑑みた上で、進歩すべき点はどこか?

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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