【現代版の火消し】真っ赤な3輪EV、活躍する時代に ただし課題も
公開 : 2020.01.08 18:50 更新 : 2021.10.09 23:55
2人乗りの真っ赤で小さな緊急自動車。119番通報を受けた東京消防庁が狭い道などにいち早くかけつけ迅速な作業にあたるための新導入です。ただし課題もあります。害現場までどのような車両で、これらを運ぶのか。
「現代版の火消し」出初式で初披露
令和2年1月6日、快晴の東京お台場地区。毎年恒例の東京消防庁の出初(でぞめ)式が行われた。
開催に際して、小池百合子東京都知事が告辞。
「18600人の消防職員、23000人の消防団員のみなさんが、昼夜を問わず都民の安全を見守っていただいていることに感謝します」と述べた。
会場では、救急車、消防車、はしご車などが走行した後、ファンファーレが鳴り、場内アナウンスが「本日発足のファーストエイドチーム」を紹介した。
登場したのは、2人乗りの真っ赤で小さな緊急自動車。119番通報を受けた東京消防庁が狭い道などにいち早くかけつけ迅速な作業にあたるために新導入した。
車両の通称は「Like-T3(ライクティースリー)」。全長×全幅×全高は、2485mm×1170mm×1075mm、ホイールベースが1610mmの三輪EV。
モーターの定格出力は3.0kw、最大出力は5.6kw。容量4.3kwhのリチウムイオン二次電池を搭載し、普通充電で満充電は約6時間。
満充電での航続距離は40km/hの定地走行で約60km。最大積載量は100kgとした。
この緊急自動車の原型は、光岡自動車が2012年8月に「ミツオカMT3」として型式認定を受けた車両だ。
開発目的として、小口配達輸送を想定していたが、今回は緊急車両として都民の安全を担う。
全国各地で様々な利用方法 課題も
ミツオカ「Like-T3」は2012年8月以降、全国各地で様々な事業者に利用されている。
例えば、日本郵便や佐川急便での荷物の集配業務用として、長崎のハウステンポスや愛媛の道路温泉では観光用として、また大阪の毎日放送では撮影車両としてなどがある。
そして今回、同車両として初となる緊急車両に採用されたのだ。
「Like-T3」の特徴は、シートベルトやヘルメットの着用義務がなく、緊急対応や観光対応に最適なことが挙げられる。
その理由は、道路運送車両法では、排気量250cc以下のバイク、側車付軽二輪車(サイドカー)となり、車検もなし、車庫証明もなし、そしてシートベルトの着用義務もない。
運転に際しては、道路交通法上、普通免許の所持が必要だが、ヘルメットの着用義務がない。
筆者(桃田健史)は、「Like-T3」が登場して間もない頃、光岡自動車EV事業部(東京都世田谷区)を訪問し、開発と今後の販売計画について関係者から話を聞いた。
それから6年ほど経ち、ついに緊急車両という大役を得た。
ただし、課題もある。
緊急な状況は24時間起こり得るため、満充電まで6時間というのはあまりにも長過ぎる。
今後は、ホンダがEVバイク等に採用している交換型の小型バッテリーパックを採用するなどの改良が必要だと思う。
また、災害現場までどのような車両で、これら小型車両を運ぶのか。運搬の利便性についてさらなる考察が必要だ。