【偉大なる血脈】ミハエル・シューマッハの息子、ミック・シューマッハの現在地 目指すは最高の舞台 前編
公開 : 2020.01.18 18:50 更新 : 2020.01.18 19:53
7度のF1ワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハの息子、ミックは2019年シーズンをF2で過ごしました。メルセデスからの誘いを断り、フェラーリのドライバー・アカデミーを選んだ彼が目指すのは、もちろん父と同じF1ドライバーです。そんなミックのいまに迫ります。
祝福か呪縛か?
それは祝福だろうか? それともある種の呪縛なのだろうか?
偉大な父を持つ息子がいつかは必ず直面しなければならない問題だ。
逃れることの出来ない父との比較に直面したり、その血脈に対する周囲からの期待に応えることが出来ないと自ら悟った時にこそ、彼らはこうした問いに答えを出す必要に迫られる。
ミック・シューマッハにとっては2019年がまさにそんな年だった。
2019シーズン、伝統あるプレマ・レーシングからフォーミュラ2に参戦したミックは、20戦中8戦でトップ10フィニッシュを果たしており、ハンガリーの高速レースでは初優勝も飾っている。
一方で、この2018年の欧州フォーミュラ3チャンピオンは12戦でノーポイントに終わっており、ミスが原因でのリタイアも5回喫している。
それでも、この魅力溢れる礼儀正しい青年は、偉大な父も30年前に通過したメルセデスF1チームからのジュニアプログラムへの誘いを断り、フェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)のメンバーとなることを選んでいる。
これまでのところ、順風満帆とは言えないかも知れないが、ミックの中にも偉大な父のDNAが深く息づいていることに疑いの余地はない。
父、ミハエルが完ぺきなドライビングを求めて年間8万kmもの走行を行っていたフィオラノ・サーキットを舞台に、F8トリブートで周回を重ねる合間に放たれる質問への答えを探す様子からもそれはハッキリしている。
マラネロの目と鼻の先にあるこのサーキットでのミックの最初の思い出は、父親がラップタイム更新を狙っている間に50ccのバイクで走り回っていたことだと言う。
初めてのフィオラノ
「奇妙な感じです」とミックは笑みを見せる。
「いま座っている場所で父のドライビングを見ていました。そして、今日はわたしがフェラーリのロードカーを走らせています。この前ここに来た時には、モトクロスバイクを走らせていたんです」
「それがフィオラノでの思い出です」と彼は言う。
ミックが最初にここへ来たのはまだハイハイも出来ない赤ん坊の時であり、その後、よちよち歩きの頃の写真も残っているという。
「分厚い上着を着た写真です。おそらくウインターテストでしょう」
彼は、陸橋を渡ったところにあるリストランテ・モンタナのことも思い出している。
シェフであり、歴代のフェラーリF1ドライバーたちにとっての母親代わりとも言える「ロゼッラおばさん」が腕を振るったパスタの味だ。
当時テストは実質的に無制限で行われており、フィオラノは父、ミハエルの第二の故郷とも言える場所になっていた。
だが、ミックがこのサーキットを走るのは、トリブートのローンチプログラムの一環として、このフェラーリ製ロードカーのステアリングを握っている今日が初めてのことだった。
「テストを行うことは禁止されています。より効果的なシミュレーターがあることを考えると、ロードカーでの周回にほとんど意味はありません」と、ミックは言う。
つまり、彼はトリブートでの走行を純粋に楽しんでいるということであり、このクルマのことをロードカーというよりも、重量級のレースカーのようだと表現している。
さらに、ステアリングホイールに設置されたシフトを促すインジケーターが有効であり、コーナーから脱出する際のシームレスなパワーデリバリーも素晴らしいと話す。