【驚きの体験】チーフテン戦車を操縦 売り先には注意 顧客には陸軍も 前編
公開 : 2020.01.25 18:50
ワイルド・スピードなどの映画にも出演した戦車を操縦してみました。クルマなど簡単に押し潰してしまう戦車ですが、その操縦方法も自動車とはまったく異なるものでした。さらに、英国のTV番組が改造したベントレーGTオフロード仕様など、興味深い存在が目白押しです。
「作戦変更」
「作戦変更、戦車を手に入れた!」
そう、彼らが手に入れたのは戦車であり、わたしはいまその戦車に乗って、Tanks-Alotという名のトレーニングセンターに広がる戦場を走り回っている。
いま操縦しているのは、まさにワイルド・スピードEURO MISSIONに登場したチーフテン戦車だ。
冒頭のセリフは、高速道路を横断するように打ち込まれた鋼鉄製のケーブルによって、行く手を阻まれたコンテナトラックからこの戦車が飛び出してきた瞬間に発せられたものだった。
衝撃的なシーンだったが、ノーサンプトシャー州ブラックリー近郊に広がる泥だらけの大地をわたしが操縦する様子はまったくドラマチックには見えない。
それよりも、膝まで埋まるようなこの泥のなか、わたしからは見えない場所にいるはずのカメラマンが心配だ。
120mm砲の真下、戦車の鼻先近くに深く設置されたシートからは、真正面とわずかな横方向だけしか確認することが出来ない。
この限られた視界のほかは、もしそこにいるとすればだが、すべてが指揮官の責任となる。だが、いまその頼りになるべき指揮官はいないのだ。
この戦車へと乗り込むのに使ったアルミニウム製ラダーは、70tもあるこのチーフテンMk.10戦車の下敷きとなって永遠に失われてしまった。
それに、チーフテンがこんなにも重いとは思いもしなかった。
カークラッシャー
標準仕様なら車重56tだが、ワイルド・スピードに出演したこの車両には、撮影スタッフの手によって14t分もの装甲が追加されており、そのコストは噂によれば24万ポンドにも達したと言う。
Mr.ビーンのミニが戦車に押しつぶされたシーンを覚えておいでだろうか?
映画ではカットされていたが、このシーンの後スタッフたちは戦車のキャタピラからミニの残骸を、まるで歯に挟まった食べカスを掃除するかのように撤去している。
もし、挟まった残骸をそのままにしておけば、キャタピラが回転するたびに、戦車のサイドスクリーンやサイドスカート、マッドガードがダメージを受けることになっただろう。
ワイルド・スピードでもそうだったように、わたしがいま操縦しているこの戦車はカークラッシャーとしてよく登場しているが、こうした理由から映画プロデューサーたちは、1台を押し潰すたびに撮影を止めるよりも、装甲によって戦車を保護したほうが安くつくと考えたのだ。
実際、この戦車はいまもクルマを押し潰し続けている。
深い泥の中でもがきながらも、40台ほどの押し潰された残骸が敷地の脇に置かれている様子を見れば、それは一目瞭然だ。
一瞬、思わずもし駐車場で操縦を誤ったらどうなるかが頭をよぎった…。
それでもチーフテン戦車の始動自体はまったく簡単だ。