【家族との再会】初代メルセデス・ベンツAクラス(W168型) ふたたびの邂逅 前編
公開 : 2020.03.18 11:50 更新 : 2020.03.18 15:43
英国版AUTOCARスタッフのアンドリュー・フランケルは、かつて所有していたW168型Aクラスを買い戻しました。失敗作の烙印を押されているこのクルマですが、過去20年でもっとも革新的なモデルであり、彼にとっては家族との思い出が詰まったかけがえのない存在のようです。
検討の余地なし
結婚したのはちょうど20年前だったが、家庭をもつということは、さまざまな面でそれまでの生活に変化が起こることを意味していた。
影響を受けたことのひとつが、モータージャーナリストでありながら、自らクルマを購入しなければならなくなったことだった。
まさに恐れていた通りだ。
当時すでにこの業界に入って10年、自らクルマを購入することなく、他のジャーナリストたちと同じく試乗だけを頼りに、クルマ選びに迷うひとびとにアドバイスを贈っていたのだ。
だが、結婚によってこんなマネも許されなくなってしまった。
テスト車両が手に入ったとしても、それが子どもたちやその荷物を積み込むだけのスペースを確保しつつ、混みあったロンドンの街中でも取り廻しに困らないコンパクトさが常に確保されているとは言えないからだ。
実際、そんなクルマは1台もなかった。
あるひとつを除いて。
Aクラスを購入するという決断は、まったく決断と呼べるようなものではなかった。必要とされる条件を頭にインプットすると、はじき出された答えは、Aクラスを購入するか、子どもを売り払うかの二者択一だったのだ。
つまり、まったく検討の余地などなかったということだ。
初代ミニ以来の発明?
短いボディに十分なスペースを確保し、コンパクトながら頑丈なAクラスだが、最初の約1万6000kmをメルセデスのプレス向け試乗車として、わたしのようなモータージャーナリストに手荒く扱われ、当時引退したばかりだったベースグレードのモデルであれば、なんとか手に入れることが可能だった。
こうしてR130 ONHのナンバーを付けたAクラスが我が人生へとやって来たのだ。
正直言って、このクルマが来た時も大した感動はなかった。
みんなのように乗り心地とハンドリングを批判したりはしなかったが、ルックスはクールとは言い難く、走らせても遅かった。
さらに、キャビンを見渡してみても、多くが指摘した通り、クラス平均には十分達していたものの、やはり使われているマテリアルのなかには、とてもベンツだとは思えないようなものが含まれていた。
しかし、当時わたしはこのクルマがどれほどの存在かということを理解出来ていなかったのだ。
もちろん、パッケージングに関して、Aクラスは初代ミニ以来の発明だとは聞かされていた。
さらに、このクルマはサンドイッチ構造を採用しており、正面衝突の際にはキャビン下側へとエンジンが潜り込むことで、衝撃のほとんどを吸収させることなども教わっている。
だが、その必要がなかったために、実際に購入してみるまで、こうしたメリットを理解していなかった。
そして、それが分かるまでに大して時間は掛らなかった。