【この時期になぜ?】レンジローバー・イヴォーク超え ジャガー初EV「Iペイス」 販売40%増の背景
公開 : 2020.04.28 05:50
自動車産業界全体にとって、新型コロナウイルス感染症の影響は極めて大きいです。そんななか、ジャガー・ランドローバー(JLR)グループ内で、ジャガーIペイスの躍進が印象的です。その理由は、2つありました。
厳しい中での光明 Iペイスが40%増
やはり、厳しい内容だった……。
英国のジャガー・ランドローバー(JLR)が4月18日に発表した、2019年度(2019年4月から2020年3月)の世界販売総数は50万8659台。
前年度比では12.1%減となった。
ブランド別では、ジャガーが22.0%減、ランドローバーが7.7%減である。
販売減少を最大要因は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響だ。第4四半期だけでみると、JLR全体で前年同期比30.9%減と落ち込み幅が大きい。
市場別で見ると、地元英国が9.6%減、北米が7.5%減、中国が8.9%減、欧州全体が16.1%減、日本を含むその他の国で20.3%減となった。
中国については、第2四半期と第3四半期ではそれぞれ前期比10%以上増だったが、2020年1月以降に中国各地で経済活動が急速に冷え込んだ。
中国の後、経済への打撃は欧州、日本、北米に広がっている状況だ。
JLRに限らず、自動車産業界全体に対する新型コロナウイルス感染症の影響は極めて大きい。
そうした中でも、JLRでは昨年度比で販売が伸びたモデルが2つある。
1つは、レンジローバー・イヴォークで、前年度比で24.7%増。
もう1つが、ジャガーIペイス。前年度比で40.0%増と大きく伸びているのだ。
イヴォークは2019年から新型導入となったことで、乗り換え需要を含めて販売が伸びることは十分に理解できる。
一方で、EVであるIペイスがここまで大きく伸びた背景には何があるのか?
ジャガー初のEV 誕生当時は期待薄
正直なことを言うと、登場した当初、メディアはIペイスに対する関心が低かった。
2016年11月の米ロサンゼルスモーターショーで、2018年量産予定としてワールドプレミアされた時、筆者(桃田健史)を含めたメディアの見方は、いわゆる「one of them」だった。対象を自動車に限らず、欧米人がこう表現する場合、「可もなく不可もなく」といったニュアンスである。
当時、EVといえば、テスラが躍進中で、モデルSに次ぎモデルXの量産体制がやっと整い始めた頃。
さらに、セールスボリュームが大きな新車価格5万ドル市場向けにモデル3が発表されるな否や、驚異的な先行受注数を記録していた。
そんなテスラ新派が多いカリフォルニアに登場した、Iペイスに対して「モデルXに便乗したもの」といった冷ややかな見方もあった。
そうした状況が徐々に変わった。
その後の欧州各地のモーターショーで、Iペイスのボディ骨格や電動システムなどの技術展示がされ、ジャガーのEVに対する本気度がメディアや一般ユーザーの中に徐々に伝わり始めた印象がある。
こうした地道なマーケティング戦略を経て、量産が開始されると、実車に乗ったメディアや、他の自動車メーカー関係者の間で「これは、テスラとは別格だ」という声が挙がり始めた。
「別格」とは、何を意味するのか?