クルマは作品、店舗は器、マツダの新ブランド店に初潜入
2016.10.29
「だれもが持っているDNAに触れる」
そんな新ショールームができたと聞き、リニューアルオープン直前の関東マツダ高田馬場店を訪れた。
“クルマは作品、店舗は器” と公言する近年のマツダだから、新店舗はアトリエにでもなるのだろうかと、タンスから背広とネクタイを引っ張り出し、東京地下鉄副都心線の西早稲田駅に向かった。
最初に目に入ってくるのは、オープンカフェのようなデッキテラスに並ぶ新世代マツダ車だ。その奥にモノトーン基調のハイセンスなショールームが続く。建屋のなかにはカフェのカウンターまである。この高田馬場ショールームもマツダのデザイン本部が監修し、建築家がデザインを担当した。
今回は、その建築家の谷尻 誠さんとマツダの前田育男常務執行役員にお話しを伺うことができた。
高田馬場という人通りの多い土地柄、新店舗には日本の美意識の “間” の取り方を採用したという。
「西洋のお城のような城門を構えた店舗では入りづらいと考えました。日本の寺院には、入りやすさがありますよね。誰でもどこにでも入っていける感じです。けれども、御もてなしの敷居のようなものは作ってあります。(前田)」
新店舗は、建屋と明治通りを緩やかにつなぐオープン・デッキがその役割を果たす。沿道を歩いていたら敷地になんとなく入っていた、という感覚なのだ。
「空間造りには、縁側の考え方を取り入れました。縁側というのは、中のようでありながら外に近い部分、建築の世界では中間領域と言います。入り口ではないけれど、コミュニケーションの入り口になっている、そうした空間なのです。(谷尻)」
高田馬場店を訪れたらフロアに注目してほしい。オープンデッキはウッドのフロアになっているが、それが建屋と外の境い目で途切れるのではなく、建物の内側4mほどまで引き込まれている。つまり外と内をひとつの境で分けるのではなく、あいまいにして連続性を持たせたのだ。
自動車のCADで高田馬場店をつくった
ショールーム外観はさらに手が込んでいる。外壁を一枚の壁で構成するのではなく、複数のルーバーで組んでいるのだ。数えてみたら21段もあるうえ、少しずつ異なるひねりを加えている。
「ルーバーの角度や見え方のシミュレーションにはクルマのCADを使いました。建築のCADは大きな構造物を扱うものなので、われわれからすると粗いのです。自動車デザインのCADは、0.3mmの世界で見栄えを検証できるツール。ここは建築とクルマのコラボがあらわれた部分ですね。(前田)」
ルーバー越しに差す陽ざしは、木漏れ日のようだ。木々の下を抜けて寺院に入っていくときのように、自然に足が進む。
「日ごろから矛盾をどうデザインするか話しています。よい違和感のことですね。中だけど外、かたくないけれど緩くもない。本来同居しないものを同居させたところに、人は魅力を感じるのではないでしょうか。(谷尻)」
おしゃれな学生さんたちと下町の交差点。高田馬場という地域性を、マツダはうまく昇華したと思う。関東マツダ高田馬場店は11月5日オープンだ。
店舗住所:東京都新宿区高田馬場1-2-12(11月5日オープン)
電話番号:03-3208-8561
営業時間:10:00〜19:00
定休日 :毎週火曜日(不定水曜定休あり)