理解後の「幸福感」は他に例がない ランドローバー・レンジローバー 長期テスト(最終)

公開 : 2024.01.13 09:45

新世代へ生まれ変わり、上級志向を強めた5代目レンジ。理想的な高級SUVといえるのか、英国編集部が長期テストで確かめます。

積算2万4195km 心へ強く響かなかった第一印象

世の中には、熱烈なレンジローバー・ファンが存在する。驚異的な性能を実際に発揮させることはなくても、無条件にブランドとクルマへ厚い信頼を寄せているようだ。ランドローバーのモデルを、所有し続けたいと考えるオーナーは多い。

実際、最新のランドローバー・レンジローバーも非常に魅力的なSUVだと思う。そんな人々の考えは理解できる。だが、初めは筆者の心へ強く響くことはなかった。

ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)

自分にとって、目下の完璧なランドローバーは、ディーゼルターボのV6エンジンを搭載したディスカバリー4だ。車内は広く快適。扱いやすいボディサイズで、シャシーは堅牢。過度に気取っていない雰囲気も好ましい。

レンジローバー P440eの長期テスト担当者へ交代した時、正直なところ、さほど心が躍ったわけではなかった。英国ではプラグイン・ハイブリッドは減税措置を受けられるが、車重2.7tのSUVを欲しいと考えたことがなかったからだろう。

筆者が住むロンドン郊外のエリアでは、いかにもな大型SUVに乗っている人へ、友好的な隣人関係が生まれるとは考えにくい。控えめな、ベルグラビア・グリーンの塗装でも。メルセデス・ベンツGLCですら、小さく感じさせてしまうスケール感がある。

担当になってすぐ、レンジローバー P440eでフランスへ向かった。2週間弱、欧州大陸の各地を出張で巡ったのだが、例によって充電の切れた駆動用バッテリーは燃費に貢献しなかった。気を使いながら運転しても、9.0km/Lを超えることはなかった。

製造品質に対する細かな気がかり

もちろん、駆動用バッテリーをフル充電すれば、エンジンを回さずに80km近く走れる。とはいえ、自宅からの移動でも、面倒がってこまめに充電することはなかった。敷地にバッテリーEV用の充電器があり、簡単に始められるなら意識も変わると思うが。

3.0L直列6気筒ターボエンジンは、それ単体で充分な動力性能を発揮する。静かで滑らかで、トルクフル。ユニットとしての洗練度も高い。ガソリンを補給すれば、それでこと足りてしまうのだ。

ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)

インテリアも、感動するほどではなかった。ピヴィプロと呼ばれるインフォテインメント・システムは完成度が高く、扱いやすい。四輪駆動システムの稼働状態がわかるグラフィックも、丁寧に描かれ感心した。雲の上のような静寂性も素晴らしい。

それでも、運転する時間が長くなるほど、製造品質に対する細かな部分が気になっていった。スイッチ類の一部には、ソリッド感に欠けるものが混在していた。

電気的なバグも、いくつか体験している。特に目立ったのがウインカー。右と左で、点滅するスピードが2倍近く違うのだ。

ウルトラファブリックと呼ばれるポリウレタン・レザーの内装素材は、触感に優れるわけではなく、ホコリも付きやすい様子。レンジローバーの価格帯にはそぐわないだろう。自身で選ぶなら本物のレザーを指定し、明るめの色で仕上げると思う。

フランスの町では、駐車場の区画からボディがはみ出た。高速道路を延々と走る場面では、ステアリングの反応が気にかかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト ランドローバー・レンジローバーの前後関係

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