ヒョンデが空飛ぶタクシー発表 2028年に量産化 eVTOL「S-A2」
公開 : 2024.01.11 06:25
・ヒョンデの航空機部門、2028年量産化予定のエアモビリティを発表。
・新型「S-A2」は都市部での空飛ぶタクシーを想定して設計。
・電動の垂直離着陸(eVTOL)機で、静かな飛行を実現。
電動VTOL機 新たなモビリティとして
ヒョンデのエアモビリティ部門スーパーナル(Supernal)は、都市部における「空飛ぶタクシー」として、新型機S-A2を発表した。2028年に生産開始予定だ。
電動垂直離着陸(eVTOL)機と説明され、2020年に登場したS-A1の後続機となる。パイロットを含め最大5人が搭乗可能で、完全電動式である。
S-A2のスタイリングは、ヒョンデ・グループのデザイン責任者であるルク・ドンカーヴォルケ氏が主導したもので、「自動車と航空機の融合」と表現されている。
NASAで勤めた経験も持つスーパーナルのシン・ジャイウォン社長は、従来のタクシーに代わるeVTOLに大きな期待を寄せている。現在の世界の民間航空機の総数が3万機以下であるのに対し、この種の航空機は「数十万機」規模になる可能性があるという。
シン社長は取材に対し、「まだ誰にもわかりませんが、利便性、時間の節約、安全性があれば、人々はこのような移動手段を使い始めるでしょう」と語った。
「何十万機もの航空機の需要を満たす準備が必要です。何機になるかはわかりませんが、これは航空業界が予測していることであり、グループの大量生産能力というアドバンテージを活かせる場でもあります」
特に生産能力においては、ヒョンデが航空産業に参入する上で大きな強みになるという。
「従来の航空産業は複雑で、多くの労働力を必要とするため、(自動車産業と)比較するのは難しい。大量生産という自動車の側面を航空にどう生かすか?」
そのため、スーパーナルはヒョンデの自動車部門と協力して生産に取り組むほか、バッテリーやパワートレイン技術、デザインのノウハウを活かしている。
デザインを統括するドンカーヴォルケ氏は本誌の取材で、自動車ではなく航空機をデザインすることは「大きなおもちゃ屋にいるようなもの」だと語った。
「わたしは自分を工業デザイナーであり、モビリティ・デザイナーであると定義しています。ヒョンデでやっていることは、自動車だけではありません。当グループは将来的に、都市における空の移動以上のことを実現するでしょう。このようなプロジェクトは航空機の設計に有益なだけでなく、より広い視野を持って自動車の設計にも還元できると考えています」
「わたしは3人の(自動車)デザイナーを起用しましたが、彼らをコンフォートゾーンから抜け出させることを目標としていました。コンフォートゾーンにとどまっているデザイナーは、古いスタイリストになってしまう。わたし達は、自動車界の決まりきった典型的デザインやスタイリングから抜け出すために、あらゆる挑戦を受け入れなければなりません」
「自動車デザイナーというものはもう存在しません。これからはモビリティです」
S-A2の特徴は、従来のヘリコプターや軽飛行機よりも静かな電動式であることだ。垂直離陸時で65dB、巡航時で45dBと、食器洗い機並の静かさを実現したという。40~65km程度の短距離飛行を想定しており、8基のティルトローターを採用し、速度190km/h、高度1500フィートで巡航できる。
今のところバッテリー駆動だが、将来的には水素燃料電池を搭載する可能性もある。
2025年からプロトタイプによる飛行テストを開始し、量産型は2026年と2027年にテストする予定である。