トヨタ・ミライ
公開 : 2014.11.20 23:40 更新 : 2021.01.28 18:23
軽自動車からスーパースポーツまで、いまや新型車が発表される際には、その燃費数値を高らかにアピールすることは当たり前。いかにガソリン消費を抑えつつ走行性能を高めるかは、メーカーの技術力を示すもっともわかりやすい指標として、雑誌広告やテレビCMで連日、大きく報道されている。
その燃費向上技術の中心となっているのは、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド技術だが、これとてガソリンを燃料としていることには変わらない。限りある資源がいつか枯渇するそのときを、多少(地球規模でいえば)、先延ばしにしようという『繫ぎの技術』でしかない。
いっぽうで、ガソリンに変わる代替燃料を動力源とする車両の開発も進められており、すでに電気自動車は各社から次々と市販モデルが投入されている。
そんななかトヨタは、はやくから代替燃料として「水素」の存在に目をつけており、水素と酸素を燃料とするFCV(燃料電池車)の開発を20年に渡って続けてきた。動力源にモーターを使用する点や、そのため排出ガスが発生しない部分はEVもFCVも違いはないが、FCVには航続距離の長さや、充填時間の短さをはじめとするメリットがある。今回の新型FCVでは3分ほどの水素充填で約650kmの航続距離(JC08モード)を達成しているというから、利便性ではEVはおろか一般のガソリン&ディーゼルエンジン車をも上回る。トヨタでは’02年より日本およびアメリカ市場においてFCHV(燃料電池ハイブリッド車)を限定販売しているが、ついに専用ボディを持つFCVの販売がスタート。世界で初めてとなる市販量産FCV、その名も「ミライ」である。
ミライのスタイリングは、2013年の東京モーターショーで発表された「FCV CONCEPT」をベースに、細部を市販モデルに即した仕様へと変更したもの。基本的なスタイルは全高の高いセダンといった印象だが、スリーサイズは全長4890×全幅1815×全高1535mmだから、相当に大きい。なお燃費性能の向上を考えれば、4ドアセダンより空力に優れる5ドア・ハッチバックのほうが有利なのはプリウスを見ればわかるとおり。それでもセダンボディを選んだ理由を開発者に訊ねると、『まず根幹車種としてセダンを成立させられれば、同じユニットを用いて様々なFCVを作る事ができる』とのこと。