BMW i5 メルセデスAMG EQE テスラ・モデルS 「運転を愉しむ」ために乗りたい1台は? 電動サルーン3台比較(2)
公開 : 2024.01.20 09:46
意欲的なドライバーを夢中にするのは難しい
対するi5 M60は、電動のBMW M5を期待するなら、少々肩すかし。スポーツサルーンというより、7シリーズを縮小した高級サルーンといった印象の方が勝るようだ。そのぶん動的に洗練され、乗り心地は3台のベストといえるが。
運転すれば、5060mmある全長や、2380kgの車重を実感する。オプションの後輪操舵システムと、アクティブ・アンチロール機能付きエアサスペンションにより、低速域での敏捷性は高められている。それでも、ワンテンポ遅れるような反応は否定できない。
ステアリングホイールの重み付けは、モデルS プレイドよりベター。しかし、アスファルトの様子が指先へ伝わってくることはない。
タッチモニターでスポーツ・モードへ切り替えると、車高が下がり、コーナリングの鋭さではモデルS プレイドを凌ぐ。だが同時に、車重も更に意識することになる。
転がり抵抗へ配慮された、コンチネンタル・タイヤのグリップ力も高いわけではない。フロント側が、意外なほど早く外側へ流れてしまう場面もあった。
スタビリティ・コントロールをオフにしても、Mモデルらしい、アクセルペダルによるスタンス調整は難しい。落ち着きに優れ、動的能力は高いといえるが、積極的なドライバーを夢中にさせることはないかもしれない。
運転を愉しむために乗りたいEQE 53
かくして今回の3台は、成熟した内燃エンジン・スーパーサルーンの領域には、まだ届いていないといえるだろう。気持ちを高ぶらせ、五感を刺激するような要素が欠けている。それぞれの動的能力は、決して低くないとはいえ。
エグゼクティブサルーンというテーマでの比較なら、洗練され角の取れたi5 M60が優勝を掴むはず。だが、ドライビング体験の豊かさでトップを奪うことはない。
モデルS プレイドは、驚異的な加速力を見せつける反面、フロントタイヤ主導の操縦性が影を落とす。正直なところ、そこまで速い必要性も低い。航続距離は1番長く、テスラ独自の急速充電器、スーパーチャージャー・ネットワークは魅力的ではあるけれど。
結果として、2024年初頭の電動スーパーサルーン対決は、僅差でEQE 53が勝利ということになりそうだ。車内空間は3台で1番限られ、電費効率も高くなく、車重も軽くないが、運転を愉しむために乗りたいと思えるバッテリーEVだと評価できる。
消去法かもしれない。だとしても、非常に意味深い比較になったのではないだろうか。
画像 運転を愉しめる1台は? BMW i5 メルセデスAMG EQE テスラ・モデルS 内燃エンジンのM5とAMG GTも 全119枚