レクサスRC-F
公開 : 2014.11.20 23:30 更新 : 2017.05.29 19:24
回転計・速度計はともに真下がゼロを示すタイプだが、速度計はなんと340km/hフルスケール。日本の高速道路の速度上限である100km/hは、ちょうど9時の方向、真っすぐに左を示した場所にある。つまり速度計が表示可能なうち1/4しか、日本の公道では使う事ができないことになる。
スイッチひとつで目覚める5ℓV型8気筒DOHCユニットは、基本設計こそIS Fと共有だが、直噴機構D-4Sの搭載や吸排気可変バルブタイミング機構VVT-iEの最適化などにより最高出力477PS/7100rpm、最大トルクは54.0kg-m/4800-5600rpmを発生。Fシリーズに共通する左右4本だしマフラーから放たれる排気音は迫力満点で、アイドリング時から大排気量V8ならではのサウンドを聞かせてくれる。
このスタイリングに500馬力に迫らんとする大排気量V8を搭載……と考えると思わず尻込みしてしまいそうだが、RC Fの特徴はきわめて乗りやすいというもの。組み合わされるトランスミッションは8速ATで、Mポジションを選択すると最短0.1秒でシフトチェンジを行うスグレモノだが、ドライブモードセレクトをECOモードにすると街中でもまったく構えることなく走らせることができる。
そして驚くべきは取り回しの良さで、最小回転半径は5.4m。わずかな道幅しかない場所でのUターンなども容易に行える。ハイパフォーマンスカーでありながら、日常での使いやすさも兼ね備えている点は、まさにレクサス水準。少しばかり注目を集めやすいエンジンサウンド以外は、近所への買い物に使うのもまったく心配はいらない。
いっぽうで、RC Fの持てる実力をフルに発揮できる場所は公道でないことはご想像のとおり。わずかに右足に力を込めるだけで制限速度に達してしまい、街中でその動力性能を楽しむことはほんの一瞬だけといっていい。ほんのわずかな時間で高速道路の100km/h巡航を行ってみたけれど、路面の継ぎ目を乗り越えたときに感じる衝撃が少し気になった程度で、遮音性や快適性はスポーツクーペとは思えない高級感のあるもの。サーキット走行だけでなく、その往復のロングドライブも快適にこなせることは間違いない。
■「買い」か?
そのほかにも贅の限りを尽くしたインテリアは、リアシートのシートバックに6:4の分割可倒式を採用し、トランクスルー機構を搭載。リアシートが通常のポジションのままでも、ラゲッジルームは374ℓの容量を確保しており、ゴルフバッグが2つ収納可能と、顧客層の求めるであろうニーズをすべて満たしている。
まさに死角ナシといった現代最高のFRスポーツ、RC Fの車両価格は953万円。フロントフードをはじめ車体各部にカーボンパーツを纏い、各種専用装備を備えたカーボン・エクステリア・パッケージ装着車は1030万円となる。先に述べたように、ライバルとするM4の車両価格が1075万円〜1126万円であることを考えると、RC Fのお買い得感は強いといえる。
サーキットでは抜群のパフォーマンスを楽しめ、長距離ドライブも快適に行える。そのうえ日常での使用も苦にならない取り回しや実用性を備える、まさにレクサスらしい新時代のスポーツクーペがRC Fだ。BMWのMやメルセデス・ベンツのAMGに対し、歴史ではまったく及ばないレクサスの「F」ブランドだが、その目指す領域や有する実力はすでに比肩するレベルにある。
(文・佐橋健太郎 写真・高橋学)