生半可な「マイチェン」じゃない トヨタGRヤリス 試作車へ英国試乗 随所を強化し280ps

公開 : 2024.01.15 19:05

8速ATを新設定 サスペンションは強化

トランスミッションは、6速マニュアルではリンケージを高剛性化。8速オートマティックも新設定された。トルクコンバーター式ながら強力にロックアップされ、滑らかさを犠牲にしつつ、パワーロスを最小限にしている。

8速ATの場合、車重は20kg増えるが、ローンチコントロールも実装される。トヨタによれば、6速MTより0-100km/h加速で0.3秒も速いとか。富士スピードウェイのラップタイムでは、1秒以上の差が出るという。

トヨタGRヤリス(マイナーチェンジ版プロトタイプ/欧州仕様)
トヨタGRヤリス(マイナーチェンジ版プロトタイプ/欧州仕様)

トルクセンシング・ディファレンシャルは、ATとMTで共有。今回のフェイスリフトで、前後のパワー分配率が改められ、モードはノーマルとトラック(サーキット)、グラベルの3種類へ変更された。

サスペンションは、スプリングレートを増加。サーキットパッケージでは、従来の前後とも36N/mmから、フロント46N/mm、リア40N/mmへ変更された。アンチロールバーは、フロント側で強化してある。

確認が長くなってしまったが、筆者がアップデート版GRヤリスのステアリングホイールを握ったのは、貸し切ったサーキット。量産前のプロトタイプという状態だったが、全開走行が許された。前期型のGRヤリスも用意され、乗り比べることも可能だった。

マイナーチェンジ前でも、GRヤリスは記憶に残るクルマだった。コーナーへ意欲的に食らいつき、英国編集部のスタッフを夢中にさせるほど優れていた。それでも、アップデートを受けたメリットは疑いようがない。

出色の運転体験は損なわれていない

シートポジションが低くなったことで、クルマの中へ収まった印象が増し、前方視界は大幅に広がっている。アナログ・メーターでなくなったことは少々残念だが、モニター式のメーターも速度と回転数、シフトポジションなどへ情報が絞られ、見やすい。

そして、出色の運転体験はまったく損なわれていない。引き締められたフロント・サスペンションにより、旋回初期のダイナミックさは若干薄れたものの、極めて機敏なことは従来どおり。コーナーの出口へ向けて、シャープなラインを狙っていける。

トヨタGRヤリス(マイナーチェンジ版プロトタイプ/欧州仕様)
トヨタGRヤリス(マイナーチェンジ版プロトタイプ/欧州仕様)

フロントノーズは積極的に向きを変え、僅かなボディロールで荷重を移し、素晴らしいグリップ力を引き出せる。アクセルオンで、前後左右のタイヤへ伝わるトルクは巧みに制御され、トラクションを最大化しつつ加速していく。

筆者は6速MTの方が好みだったが、8速ATも素晴らしい。Dポジションのままでストレスフリーながら、ドライバー自らギアを選んでも、反応は素早く滑らか。20kg増える車重も、感じさせない。

ブレーキペダルの感触も見事。ステアリングホイールの手応えや、路面からの情報も文句なし。過去に満点評価を獲得したホットハッチは、特長を保ちながら能力を更に高めたといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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