お国柄が息づく2台に試乗 ルノー・キャプチャーEテック、DSオートモビルDS3ブルーHDi コンパクトでもわが道を行く

公開 : 2024.01.16 07:35  更新 : 2024.01.16 21:40

実用性高く、ルノーらしさ色濃い キャプチャー

キャビンはDS3でも、後席に身長170cmの僕が座れるスペースはあるけれど、キャプチャーは後席にスライド機構を備えるためもあり、広さは上。荷室の容積も、その後席をもっとも後ろにスライドした状態でさえ、DS3を大きく上回る。

シートの座り心地は固めのキャプチャーに対し、DS3はフレンチらしいふっかりした掛け心地。どちらもデザインから連想できる着座感だった。

ルノー・キャプチャーEテック ハイブリッド・レザーパック
ルノー・キャプチャーEテック ハイブリッド・レザーパック    神村聖

最初に書いたように、パワートレインはキャプチャーがフルハイブリッド、DS3がディーゼルという違いがある。

Eテック ハイブリッドシステムは、各メディアで何度も紹介されているので詳細は省くが、1.6L自然吸気ガソリンエンジンに4速、モーターに2速というメカニカルなギアボックスを用いているだけあってダイレクト感が印象的だし、エンジン音の変化で変速の様子が伝わってくるので臨場感がある。

ただしこれといったピークはなく、マニュアルシフトはできないので、積極的にドライブする人には、1.5LディーゼルターボのDS3が向いている。エンジン自体はさほど力強くはなく、音もそれなりに響くものの、車両重量がキャプチャーより90kg軽いし、8速ATが効率的に仕事をしてくれている印象だ。

WLTCモード燃費はキャプチャーが22.8km/L、DS3は21.0km/Lだが、高速道路モードではDS3が逆転する。ハイブリッドらしく市街地や郊外で経済的なキャプチャー、高速道路で燃費が伸びるところがディーゼルならではのDS3という違いがある。

乗り心地はキャプチャーがインターナショナル、DS3がフレンチラグジュアリーという違いを感じた。キャプチャーは低速では固めに思えるものの、ガチガチではなく重厚という感触であり、速度を上げていくとルノーらしいフラットライドが心地よい。

ふだん使いでも際立つ個性

DS3は逆に低中速でのふんわりゆったり感に焦点を絞っている感じで、速度を上げると上下の動きが気になるようになるものの、コンパクトクロスオーバーらしからぬゆったりしたふるまいは貴重だ。

この違いから想像できるように、ハンドリングが模範的なのはキャプチャーだ。シーンを問わずに自然に素直に曲がってくれるので気持ちいい。ステアリングに路面からのインフォメーションが伝わるのもルノーならではだ。

DSオートモビルDS3オペラ・ブルーHDi
DSオートモビルDS3オペラ・ブルーHDi    神村聖

DS3はディーゼルということもあってフロントが重めで、足がソフトなので、身のこなしはおっとりしている。このサイズのクロスオーバーはキビキビ感を出す車種が多いので、我が道を行く立ち位置は個人的に惹かれる。

両車に共通して感じたのは、全幅1.8m未満、全長4mちょっとというサイズのおかげで、日本の道でも苦もなく取り回しできること。

でもそのときに受ける印象は、似たような車格の日本車とはまるで違う。キャプチャーのハイブリッドシステム、DS3の造形や仕立て、どちらも独創性にあふれていて、2台が醸し出す個性もまるで違う。

単に実用的なクルマで終わっていないところがフランスらしいし、お互いが他と違うことをアピールしている点も、多様性を尊重する国ならではだと思った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

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