良い意味で「予想を裏切る」身のこなし フォルクスワーゲンTロックへ試乗(2) 乗り心地も優秀

公開 : 2024.01.23 19:06

英国ではクラスを席巻する勢いの人気車種、Tロック ロー&ワイドなプロポーション 動的能力を考えると優秀な乗り心地 英国編集部が総合的に評価

動的能力の幅広さを考えると優秀な乗り心地

フォルクスワーゲンTロックは、濡れた路面でも優れたトラクションを発揮する。2.0Lガソリンターボ、2.0TSIの0-100km/h加速は、AUTOCARの計測で6.7秒を記録した。カタログ値の7.2秒は、だいぶ控えめな数字のようだ。

英国仕様のディーゼルターボは、6速MTのみの設定の114psでも充分なパワー感があり、0-100km/h加速は10.4秒。ただし、ガソリンターボと比べると洗練性は若干劣る。

フォルクスワーゲンTロック(英国仕様)
フォルクスワーゲンTロック(英国仕様)

7速デュアルクラッチATが標準となる、150psの方が印象は良く、四輪駆動も選択できる。発進時から活発にボディを引っ張り、トルクが太く扱いやすい。

乗り心地は、動的能力の幅の広さを考えると優秀。ダイナミック・シャシーコントロールと呼ばれる、アダプティブダンパーと可変レシオ・パワーステアリングも強みの技術といえるだろう。

ドライブモードをスポーツにすると、明らかにライバルのクロスオーバーより反応は鮮明。刺激的とすら表現できる。

他方、コンフォート・モードでは、しなやかな優しい乗り心地へ一転。このクラスで、両方を高次元で叶えたモデルは、他に存在しないのではないだろうか。

操舵に対する反応の軽快さやリニアさ、予想のしやすさも強み。可変レシオのステアリングは充分クイックながら、驚くほど急に変化するわけではない。重み付けも、充分に納得できる。

低い速度でも扱いやすく、直感的にTロックを導いていける。加えて、どのドライブモードを選んでも、路面との相性の悪さも感じられない。魅力的なシャシーだ。

良い意味で、予想を裏切る身のこなし

四輪駆動システムは、ハルデックス・カップリングを採用。トルクベクタリング機能を搭載するが、その効きも控えめで、リアタイヤ主導の感覚は得られない。それでも、スタビリティ・コントロールと相まって、限界領域での安定性を高めている。

興奮を誘う操縦性ではないかもしれない。とはいえ目指された水準は高く、ファミリー・クロスオーバーとして角の取れた動的能力の必要性を考えれば、高く評価できるだろう。濡れて冷えたワインディングを、意欲的に駆け回ってくれた。

フォルクスワーゲンTロック(英国仕様)
フォルクスワーゲンTロック(英国仕様)

全高は高めでも、サスペンション・スプリングは引き締まり、グリップ力は期待以上。旋回時に横方向へ荷重が移動しても、タイヤは路面をしっかり捉え、充分なスポーティさがある。

タイトコーナーでは、加速しながら頂点へ食らいついていく。良い意味で、予想を裏切る身のこなしだ。

スタビリティ・コントロールの介入は上品で、グリップを超える勢いで右足を傾けても、ドライバーへ気付かせないようパワーが調整される。その電子制御をオフにすると、アンダーステアが露呈。4モーション・システムの、技術的な限界を知ることになる。

Tロックはエネルギー効率も良い。1.0TSIでも1.5TSIでも、16.7km/Lがうたわれる。7速デュアルクラッチATの2.0TSI 4モーションでは、13.5km/L。ディーゼルターボは更に有利で、150psの仕様でも20.9km/Lが主張される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フォルクスワーゲンTロックへ試乗の前後関係

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