BMW 320i ラグジュアリー

公開 : 2012.11.20 17:33  更新 : 2017.05.29 18:00

フラットなトルク特性のエンジンに組み合わされるのはZF製の8段A/Tである。やけに低い1速で瞬時にターボを目覚めさせた後、シフトショックなどという言葉すら連想させないほどの手際のよさでシフトを繰り返すA/Tのおかげで、320iのパワートレーンは無段階変速のモーターのように感じられる。頭の中で328iと320iを戦わせた場合、勝者は迷うことなく320iだ。8速まで多段化されたA/Tだからこそ、3シリーズ用ガソリンエンジンとして最小(とはいえ184psもある)の馬力と相性が良く、これで充分と思わせてくれるからである。その点328iのパワートレーンは、スポーティ方向にも省燃費方向にも割り切れていないような気がする。日本のインポーターも同じような予測をしていたからこそ、328iを半年ほど早くリリースして、新しモノ好きの心を満たしたのではあるまいか? ともあれ、名実共にF30型3シリーズのメインは320iで決まりだと思う。

今回の試乗車は320iの“ラグジュアリー”だったのだが、エンジン以外の面で328iのラグジュアリーと比較した場合に際立っているのは17インチ径のタイヤだった。サイズは328iラグジュアリーの225/45R18に対し225/50R17となり、当たり前の話だが17インチの方が路面のタッチが明らかに優しい。それでも、いざハイペースで走らせるとかつての銘機、E30型のM3のような軽快感、リニアリティを存分に感じさせてくれる。標準タイヤはもちろんランフラット(試乗車はBS)だが、今回は特にネガを感じなかった。パンクしてもしばらく走り続けられることがウリのこのタイヤも、デビューから10年以上が経って各社ともそろそろ勘所がわかってきたのだろうか。

320iをラインナップに加えたことで、ようやくBMWはプレミアムDセグメントに現実的なコマを送り出せたといえるだろう。対ライバルについて書こうとすれば、この倍の文字量が必要になるので、アウディA4とメルセデスCに対する感想を端的に述べておこう。320iは両車に対して走りの軽快感では圧勝しているが、内外装の質感はアウディに対して少し負けており、車両全体のどっしり感、ドイツ系良いモノ感はメルセデスのそれに敵っていない、という想定通りの結末である。とはいえ、今後数年を経て、さらなる熟成を待つ必要はまったくない。昔からのBMWらしさを愛する人、そして最新の省燃費に興味のある人にとっては今すぐ買って間違いのない1台だと思う。

(文・吉田拓生  写真・花村英典)

BMW 320i ラグジュアリー

価格 470万円
0-100km/h加速 7.6秒
最高速度 235km/h
燃費(JC08モード) 16.4km/ℓ
CO₂排出量 138g/km
車両重量 1540kg
エンジン形式 直4DOHCターボ、1997cc
エンジン配置 フロント縦置き
駆動方式 後輪駆動
最高出力 184ps/5000rpm
最大トルク 27.5kg-m/1250-4500rpm
馬力荷重比 119ps/t
比出力 92ps/ℓ
圧縮比 11.0:1
変速機 8段A/T
全長 4625mm
全幅 1800mm
全高 1440mm
ホイールベース 2810mm
最小回転半径 5.4m
燃料タンク容量 60ℓ
荷室容量 480ℓ
サスペンション (前)マクファーソン・ストラット
(後)5リンク
ブレーキ (前)Vディスク
(後)Vディスク
標準タイヤサイズ 225/50R17

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