2. ホンダシビック・タイプR

先代のホンダ・シビック・タイプRは、本誌のお気に入りのホットハッチの1つだったので、新型車への期待も高かったが、嬉しいことにその期待は裏切られなかった。多くの点で先代と変わらないからだ。エクステリアとインテリアは新しいが、プラットフォームは先代のものを「最適化」したものである。

パワートレインとしては、おなじみのターボチャージャー付き2.0Lエンジンが、フライホイールの軽量化、インテークの見直し、排気フローの改善などにより、最高出力320psから330psへとパワーアップしている。

2. ホンダ・シビック・タイプR
2. ホンダ・シビック・タイプR

デュアルアクシス・フロントサスペンションとマルチリンク・リアアクスルはよく似ているが、トレッド幅が15mm拡大されたこと、ボディシェルが15%強化されたことと相まって、よりシャープなハンドリングと高い快適性を両立している。GTレースカーのようなリアウイングがまだちょっとした「やんちゃ感」を醸し出しているとはいえ、先代よりも大人のクルマに感じられる。

0-100km/h加速5.4秒、最高速度270km/hというパフォーマンスを、洗練された乗り心地とともに実現している。シャシーは粘り強いグリップと一体感あるコントロール性を兼ね備えており、スロットルを離したりブレーキを踏んだりすることで、コーナーでのラインを微調整することができる。心臓がバクバクし、脳内神経伝達物質をドバドバ出すようなクルマであることに変わりはないが、日々の通勤が億劫になったり、高速道路走行が我慢大会になったりするようなクルマでもない。

では、なぜこのクルマがトップでないのか? まず、ホンダは欧州向けの価格を大幅に引き上げたことが理由に挙げられる。先代は約3万3000ポンド(約620万円)からだったが、今回は5万ポンド(約940万円)が必要だ。ポンド円の為替相場や物価の高騰を考慮しても、安いとは言えないだろう。ちなみに、英国では輸入される台数が数百台規模と少ないため、英国人が手に入れるのには苦労するはずだ。

3. ヒョンデi20 N

ヒョンデは、手頃な価格のパフォーマンスカーを手掛けるメーカーとして、急速に存在感を高めている。その主な理由がi20 Nで、一回り大きいi30 N(Cセグメント)よりもシンプルでダイレクトな古典的ホットハッチである。

もちろん、小型軽量なのは助けになる。しかし、アクティブ・ディファレンシャルの代わりに従来型のリミテッド・スリップ・ディファレンシャルを採用したほか、パンチの効いた1.6Lターボエンジンや、欧州で一般的なDCTではなく6速MT、アダプティブ・ダンパーではなく優れたパッシブ・ダンパーを採用している。

3. ヒョンデi20 N
3. ヒョンデi20 N

結果は実に優秀だ。まるで本物のラリーカーのような、入念に磨き上げられた特別なキャラクターを持っている。ボディコントロール、高速走行時の精度、安定性、ステアリングの正確さは、このサイズのクルマではめったにお目にかかれないものだ。

i20は室内が広く、装備も充実している。ヒョンデはこの10年間、欧州ブランドのコンパクトカーと肩を並べるまでになった。グリップや正確性をやや過剰に感じる人もいるだろうし、フォードフィエスタSTよりも活発さが抑えられていると評価する人もいるだろう。ただし、フィエスタは廃止されたので、そこはあまり重要ではない。

標準のi20はフェイスリフトを受けたばかりだが、高性能のNモデルの改良についてはまだ発表がない。ヒョンデは今、EVのアイオニック5 Nに注力しているようだ。i20 Nもこの先、長くはないのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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