BYDドルフィン コンパクトEVで内外装のクオリティは上々 しかしながら残念な初試乗の顛末も

公開 : 2024.01.24 17:45

動的質感の軽さはコンポーネンツ由来?

95psとはいえスロットルの踏みはじめからほぼ最大トルクが出るBEVなので、動力性能に不満はない。速いわけではないが、これくらいあれば実用上は全く問題ない。

ちなみに小さなメーターパネル内を凝視すると、バッテリー残量87%で325km走行可能と出ていた。これはWLTCモードにおける一充電走行距離が400kmであることを考えれば上出来な値だと思う。

BYDドルフィン
BYDドルフィン

撮影場所まで試乗車を乗ってきてくれた新人編集部員のK君がかなりおとなしく運転してきたから、ということとも関係しているのかもしれないが……

そのK君が標準とロングレンジでホイールナットの数が違うということを教えてくれた。なるほど標準は4本スタッド。ロングレンジは5本あるのだろう。

となると恐らく、ハブまわりの容量が違うはず。またロングはアット3と同じくリアサスがマルチリンクになっているらしい。車体下を覗いてみると試乗車のリアサスはトーションビーム。標準のドルフィンが「軽々しい」原因が分かった気がした。

別に小さなハブやトーションビームが悪いと言っているわけではない。コンポーネンツのサイズ感がそのまま動的質感に表れてしまっている点が残念だということである。

最後に梯子を外された? 結論は持ち越しか

動的質感という話は、荒れた路面からの入力に車体全体が振動してその収まりが悪かったり、少しペースを上げて走るとタイヤの空気圧が足りない時のように若干ロードホールディングがピタッと定まらない時がある等々。

だがそれはコンパクトかつベーシックなEVというドルフィンの立ち位置を考えれば「重箱の隅をつつく」ような話かもしれない。

BYDドルフィン
BYDドルフィン

同じ日に乗ったアット3の時もそうだったのだが、こちらが初めて乗る中国車の印象を急いで収集すべく、いつもより過敏になってしまっていたきらいは否めないのである。

だが最後にひとつ、レーンキーピング機能付きのアダプティブクルーズコントロールの仕上がりだけは納得がいかなかった。この分野は今後進歩のシロがきっとあるはずだ。

後日、K君が車両を返却する際にBYDジャパンの方から聞いた話として、今回の試乗車がプロトタイプ的な未完成な部分を含む個体だったと教えてくれた。そんな状態で乗せないで! とも思うしそれも含めてメーカーの姿勢として取られてしまいますよ、とも思う。

ぜひ今後「これでどうだ!」の正しいドルフィンに乗ってみたいし、たぶん骨太な(?)ロングレンジにも試乗してみたい。

試乗車のスペック

価格:363万円(税込 オプションなし/補助金除く)
全長×全幅×全高:4290×1770×1550mm
一充電走行距離:400km
駆動方式:FF
車両重量:1520kg
電動機:交流同期電動機
定格出力:35kW
最高出力:95ps/3714~14000rpm
最大トルク:18.4kg-m/0~3714rpm
パワーバッテリー:リン酸鉄リチウムイオンバッテリー
総電圧:332.8V
総電力量:44.9kWh
タイヤサイズ:205/55R16(フロント)205/55R16(リア)

BYDドルフィン
BYDドルフィン

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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