7年目でも好感持てる「実力車」 ボルボXC60へ試乗 速度を問わず快適 振るわない4気筒

公開 : 2024.01.29 19:05

歴代ボルボ最強のT8 振るわない4気筒の印象

座面の位置は高め。シートはレザー張りで座り心地に優れ、サポート性も良好。車内空間にもゆとりがある。リアシート側も、高身長の大人でも快適に過ごせそうだ。

ただし、荷室容量はライバルに劣る。505Lと狭いわけではないものの、アウディQ5などは550L前後ある。それでも、形状はスクエアで荷物は積みやすい。ファミリーSUVとして、普段使いで困ることはないと思う。

ボルボXC60(英国仕様)
ボルボXC60(英国仕様)

2.0L直列4気筒エンジンの印象は、優等生のXC60で振るわない部分。電圧48Vのマイルド・ハイブリッドが組まれるB5では、最高出力250ps。0-100km/h加速を6.9秒でこなすが、燃費は10.6km/Lに留まり、現代基準では褒めにくい。

また8速ATは、発進時や高負荷時の変速で若干もたつく印象。中程度の加速時は、変速完了前にトルクコンバーターが滑る感覚も小さくない。急いでいる時は、気にするドライバーもいるだろう。トルク感では、Dモードが1番強いようだ。

プラグイン・ハイブリッドでは、T6が350psで、T8が歴代ボルボ最強となる455ps。どちらも2.0L 4気筒を基本に、T6はターボチャージャー、T8はスーパーチャージャーが組まれる。駆動用モーターは共通して145psあり、リアアクスルを受け持つ。

駆動用バッテリーの容量は18.8kWhあり、64km以上エンジンを始動せずに走れる。今回の試乗では77kmが予測され、実際に近い数字を得られた。

カーナビで目的地を設定すると、コンピューターがバッテリーの使用量を調整。到着時に残量を見事に「0」とする、制御の正確さには驚かされた。

気象条件に関わらず、平穏に遠くを目指せる

T6は、電気モーターと内燃エンジンとの切り替えがシームレス。アクセルペダルを踏み込むと、僅かにエンジン音を響かせながら、駆動用モーターが先行して前方へ押し出してくれる。0-100km/h加速は5.7秒だ。

T8は驚くほど速い。180km/hへ制限された最高速度が、不自然なほど低く思えてしまう。かつての自主規制、249km/hも簡単に突破できるはず。洗練性は高いものの、勢いよく走るとガソリンエンジンのノイズが目立つようだ。

ボルボXC60(英国仕様)
ボルボXC60(英国仕様)

駆動用モーターだけで走るピュア・モードを選べば、ほぼ無音で穏やかに進む。ワンペダル・ドライブの制御は素晴らしい。極めて滑らかに、アクセルペダルの加減だけで停止できる。

パワートレインを問わず、車内の遮音性は高く、高速道路では称賛したいほど静か。風切り音も殆ど響いてこない。

ブレーキペダルの感触は、軽くスポンジー。精度や滑らかさでは劣るかもしれないが、日常的な運転ではそっとクルマを減速してくれる。ボルボを支持するユーザーが、好む特性といえる。

操縦性も、積極的なドライバー向きとはいえない。XC60を選ぶ人は、ドライバーズカー・ライクな体験を期待しないと思うものの、全般的におっとり気味。ドライブモードにダイナミック・モードがあっても、スポーティな体験を与えるわけではない。

エアサスペンションが組まれたXC60の上質さは、発売時の2017年から大幅に改善している。速度域を問わず快適で、乗り心地も優秀。気象条件に関わらず、平穏に遠くを目指せると思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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