EV、どう考える 英国ではメリット多数? 充電コスト、ハイブリッド車は

公開 : 2024.01.27 18:05

・電動化を推し進める英国のEVに関する事情を紹介。
・信頼性、航続距離、充電インフラはどうなっている?
・ハイブリッドは「妥協案」? エンジン車はいつまで乗れるか。

英国のEV事情

環境規制や社会情勢、価値観の変化といった要因から、特に欧州ではクルマの電動化が推奨されている。しかし、EV(電気自動車)の購入は、未知の領域に足を踏み入れるかのように感じられるかもしれない。

欧州ではEVの購入についてどのように考えられているのか。信頼性や航続距離、充電コストなど、本誌AUTOCARの地元である英国の事例を紹介したい。

航続距離や充電など、英国の事例を紹介する。
航続距離や充電など、英国の事例を紹介する。

EVの故障、信頼性は?

EVは内燃エンジン車よりも可動部品が少ないため、故障が少ない。

例えば、モーターの可動部品は1個で、回転運動を伝えるシャフトのみ。これに対し、エンジン車では約2000個に相当する。

フォルクスワーゲンeゴルフ
フォルクスワーゲンeゴルフ

AUTOCARの姉妹誌『What Car?』の信頼性調査によると、フォルクスワーゲンeゴルフは、同世代のエンジン搭載のゴルフよりもトラブルが少ないという。

英国のEV専門エンジニアリング会社ラルフ・ホシエ・エンジニアリングの創業者ラルフ・ホシエ氏は、「EVの信頼性は極めて高い。壊れることはほとんどありません。壊れることがあっても、たいていはすぐに直せます。例えば、バッテリーパックのリビルドは、エンジンよりもずっと早くて簡単です」と語る。

英国自動車協会(AA)で道路政策の責任者を務めるジャック・カズンズ氏は、EVの故障で最も多い出動理由は「タイヤと12Vバッテリー」だとした。

カズンズ氏はまた、EVは「最も安全なクルマの1つであり、最新の車両安全技術が搭載されている」として、スマート#3、ニオET5、フォルクスワーゲンID.7などの車種がユーロNCAPの衝突テストで最高評価5つ星を獲得していることを挙げた。

ユーロNCAPは欧州で最も厳しい衝突テストとして知られ、そこで5つ星を得るのは簡単なことではない。しかし、一部の車種で低評価を下されていることも忘れてはならない。

航続距離の心配は?

欧州で販売される一般的なEVの航続距離は160~480kmだ。現在、最も脚の長いEVの1つがメルセデス・ベンツEQSで、1回の充電で727km走る。一方、非常に短いシトロエン・アミは74kmだ。

言うまでもなく、航続距離を心配すべきかどうかは各人の移動距離に左右される。英国自動車工業会(SMMT)の技術革新担当責任者であるデビッド・ウォン氏は、本誌の取材でこう語っている。

シトロエン・アミ
シトロエン・アミ

「英国人の平均的な走行距離は週に160km強です。EVの平均的なバッテリー航続距離は、1回の充電で370km以上で、多くのドライバーが一般に使用する分には十分です。さらに、家庭用充電器を設置することができれば、エンジン車よりもEVの方が便利だと感じるでしょう」

しかし、自宅に充電器を設置できない場合、どこで充電するかという「充電不安」が襲ってくる。

この点について、充電インフラ企業グリッドサーブ社のトディントン・ハーパーCEOは、「EVで当社の充電ステーションに来ていただければ、もう心配はありません。非常に短期間のうちに、英国全体が非常に充実したサービスを受けられるようになるのは間違いないでしょう」と語っている。

天候も懸念材料の1つだ。気温が低い場合など、航続距離が大幅に短くなる可能性があるからだ。グリッドサーブ社の調査によると、氷点下になると航続距離への影響は10%から20%程度になるという。

しかし、バッテリーの効率性と寿命が向上すれば、この問題は解消されると考えている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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