一見「無意味」なビーチバギーをリメイク 新生メイヤーズ・マンクスへ試乗 EV版も開発中
公開 : 2024.01.30 19:05
バッテリーEVとの相性が良いビーチバギー
ワークショップに置かれていた、電動のメイヤーズ・マンクス 2.0EVは、短距離での利用を前提とした仕様だった。最高速度は40km/hへ制限され、欧州ではシトロエン・アミと同じマイクロカーに相当する。
駆動用バッテリーの性能などで価格は変化し、フルスペックなら7万4000ドル(約1102万円)。しかし、これなら4万9000ドル(約735万円)に収まるという。
一般的に、アイコニックなクラシックカーの電動化には、否定的なクルマ好きが多い。エンジンの味わいが失われることと、驚くほどに膨らむコストや車重へ、眉をひそめたくなる理由はわかる。短い走行距離にも。
だがメイヤーズ・マンクス 2.0EVなら、そんな批判はさほど当てはまらないだろう。ポティカーが述べるように、フォルクスワーゲンのエンジンを求めて、ビーチバギーを買う人は殆どいないからだ。
過去を振り返れば、オリジナルのメイヤーズ・マンクスには多様なエンジンが載ってきた。シボレーやポルシェ、フォードのユニットや、飛行機用の星型エンジンまで。ビートルをベースにした最大の理由は、優れたコストパフォーマンスにあったといえる。
メイヤーズ・マンクス 2.0EVは、静かで排気ガスを出さない。賑わう海岸線を中心に、ゆっくり短距離を走るという乗り方だから、バッテリーEVとの相性は良い。
電動パワートレインは、砂丘の走破性にも有効だという。将来的には、メキシコのバハカリフォルニアでレースを開きたいとポティカーは話す。
内燃エンジン版キットカーの事業も維持
加えて、従来のキットカー事業も維持するという姿勢が新しい。内燃エンジンで走るビーチバギーを今後も自宅ガレージで組み立てられるよう、部品を生産・在庫している。既存ユーザーだけでなく、新規顧客の要望にも応えるという。
説明を聞き終え、鮮やかなブルーに塗られたエンジン版のデモカーへ試乗させていただいた。ボディは少し汚れていた。プロモーション映像の撮影で、最近バハカリフォルニアを全開走行した時のままだとか。
「ビートルを所有した経験はありますよね? 問題ないはずですよ」。とポティカーは笑顔で話しながら、鍵を渡す。確かに1972年式を所有しているが、インテリアはかなり簡素だ。とはいえ、運転した印象は確かにビートルへ近い。
ビートルのボディは、風雨を凌ぐための必要最低限で作られている。ドアやルーフを取り除いても、大きな違いは生まれないようだ。
メイヤーズ・マンクスのボディは小さく低く、シートポジションは高くない。ビーチバギーだから、オフロードでの楽しさ以外は基本的に考えられていない。通常のクルマと同じ快適性を、期待してはいけない。
大通りで信号待ちしていたら、隣にフルサイズSUVのGMCユーコンが停まった。筆者の頭は、ホイールアーチの上端の辺り。運転手の姿はまったく見えない。メイヤーズ・マンクスの存在へ気付いているのか、少し不安になってしまった。