「顧客を見捨てない」 ルノーはなぜルーテシアにこだわるのか EV化せず新型へ
公開 : 2024.01.25 06:25
・ルノーはクリオ(日本名:ルーテシア)を2020年代後半にフルモデルチェンジ。
・EVではなくハイブリッドとして発売。手頃な価格帯を維持する。
・「顧客を見捨てない」ために、小型のエンジン車を重要視。
エンジン搭載で2020年代後半に発売へ
フランスの自動車メーカーであるルノーは、小型ハッチバックのクリオ(日本名:ルーテシア)のフルモデルチェンジに向けた準備を進めている。
クリオは欧州Bセグメントの主力モデルであり、2023年に現行世代(第5世代)の一部改良が行われ、内外装、グレード展開、車載システムが刷新された。今後2年でさらに改良を重ねると予想されている。
第6世代となる次期型は、新しいデザインと高度な車載システムを導入して2020年代後半に発売するという計画が具体化しつつある。手頃な価格帯を目指し、内燃エンジンを引き続き採用するという。
ルノーの製品パフォーマンス責任者であるブルーノ・ヴァネル氏は本誌の取材で、小型エントリーモデルのラインナップを一新する計画を明らかにした。ルノーは最近、メガーヌ、シーニック、オーストラル、ラファール、エスパスといった中型Cセグメント車を再構築したばかりだ。
Cセグメント車は欧州で特に人気があり、利益率も高いため重宝されているが、小型のBセグメントも「忘れるわけではない」と言う。
顧客は見捨てず、手頃な価格を守る
34年の歴史を持つクリオは、今後発表される電動クロスオーバーの「4」と電動ハッチバックの「5」によって将来性が危ぶまれていたが、ヴァネル氏はそのどちらもクリオの後継車にはならないと示唆した。
「クリオはそれ自体が1つのブランドです。英国では、クリオはルノーと同じか、それ以上に知られているでしょう」
クリオの名称は1990年発売の初代モデルから変わらず、EV主流の時代になっても引き継がれていくだろう。ルノーはネーミングの重要性を認識しており、電動化に伴いメガーヌ、シーニック、トゥインゴの名称を維持している。
2026年には小型EVのトゥインゴが発売予定で、現行クリオと同じ価格帯を目指している。
しかしヴァネル氏は、顧客に選択肢を提供し、より高価なEVを導入する際に顧客層の大部分を見捨てることがないよう、エンジン搭載の小型ハッチバックを維持することが重要だと述べた。
「100%EVに直接移行するわけではありません。ハイブリッド車に移行することで、手頃な価格のブランドを守り続けることができるのです」
小型車は採算が合わない
こうした計画は、欧州連合(EU)と英国で脱炭素化スケジュールが緩和され、2035年までエンジン車を販売できるようになったため具体化されたものだ。さらに、目前に迫った排ガス規制ユーロ7の緩和も大きい。
第6世代の次期クリオは、自然吸気4気筒エンジンに電気モーター、スターター/ジェネレーター、小容量バッテリーを組み合わせた、ハイブリッドの「Eテック」システムを搭載することになりそうだ。しかし、製品ラインナップ全体で排出ガスを削減する必要性から、非電動の純エンジン車を段階的に廃止することは間違いない。
ヴァネル氏は、EVへの乗り換え時期は顧客に決めてもらうことを望んでいるという。
「お客様と市場が成熟した時、つまり十分な数の充電ステーションがあり、乗り換えが合理的なタイミングで決断してもらいたいのです」
ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOは、小型廉価な乗用車の必要性を声高に主張している。欧州自動車工業会ACEAの会長でもあるデ・メオ氏は最近、安全規制や排ガス規制によって生産・開発コストがかつてないレベルにまで高騰しているため、こうしたクルマの販売がますます難しくなっていると発言した。
「自動車メーカーがクリスマスツリーのように飾り立てたクルマを生産しなければならないため、AセグメントやBセグメントはもはや採算が合いません。クリオであろうと、大きなリムジンであろうと、違いはありません」
販売面では、欧州で一般的なリースに力を入れ、月々の支払額を抑えられるよう検討しているという。ヴァネル氏はグループ傘下の新しいモビリティブランドであるモビライズ(Mobilize)を通じて、柔軟な支払いスキームを導入する計画をほのめかした。
「人々も期待しています。モビライズは、サブスクリプションに特化した会社(Lease&Co)を買収しました。わたし達は今後、お客様により柔軟に対応できるよう努めています。子会社とともに、より柔軟なスキームを模索しています」
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