「スーパー」なGTクーペ アストン マーティンDB12 フェラーリ・ローマ マセラティ・グラントゥーリズモ 3台比較試乗(1)

公開 : 2024.02.03 09:45

新しいDB12とグラントゥーリズモは、クラス王者のローマを超えたのか 2024年のGTクーペ代表とは? 純粋な内燃エンジンを積む3台を、英国編集部が比較試乗

スーパーツアラーだと主張されるDB12

グランドツーリング・クーペを発明したのは、どのメーカーか? これを決めるには、短くない議論が必要だろう。最初期の代表的なモデルは、1951年のランチア・アウレリア B20 GTだと、筆者は思う。

1948年の、フェラーリ166 インテルだと主張する読者もいらっしゃるはず。1947年のマセラティA6が、代表例かもしれない。少なくとも、イタリアでグランドツアラーが大きく開花したことは間違いない。

ホワイトのフェラーリ・ローマと、ダークグリーンのアストン マーティンDB12
ホワイトのフェラーリ・ローマと、ダークグリーンのアストン マーティンDB12

フェラーリ・デイトナも、素晴らしいグランドツアラーだった。アルプス山脈を北に越え、メルセデス・ベンツ300SLや、アストン マーティンDB5も忘れてはならない。だが、最近のグレートブリテン島では少々言葉足らずな表現なようだ。

アストン マーティンは、新しいDB12をスーパーツアラーだと主張する。果たして、それは正当なものだろうか。ビッグ・アップデートを受けた最新のDBシリーズは、イタリアの最新グランドツアラーによる挟み撃ちに、耐えうるだろうか。

グレートブリテン島の北部、冷たく濡れた北ペナイン山脈にやって来た真っ黒なボディは、モデルチェンジしたばかりのマセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ。右ハンドル車も、もうじき提供が始まるそうだ。

真っ白なボディは、DB11が超えることができなかった、フェラーリ・ローマ。胸が苦しくなるほど美しく、息を呑むほど機敏で、唸るほど実用的な、圧倒的地位にあるグランドツアラーだ。視覚的にも聴覚的にも、非の打ち所はない。

鮮烈な心象を残すエレガントなボディ

対して、これまで一連の成功を残してきたアストン マーティンも、目覚ましい後継車を生み出した。大排気量エンジンに空力的なボディ、圧巻の快適性。DB12は、サラブレッド級の操縦性と、高速域での安定性、洗練された乗り心地を実現させたようだ。

豪奢なインテリアは、ドライバーを上質に包み込む。ダイナミックなスタイリングが、これらを1つにまとめ上げている。DB12の比較試乗をする時、ローマとグラントゥーリズモというイタリアの2台しか、適役は思い浮かばなかった。

ダークグリーンのアストン マーティンDB12と、ホワイトのフェラーリ・ローマ、ブラックのマセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ
ダークグリーンのアストン マーティンDB12と、ホワイトのフェラーリ・ローマ、ブラックのマセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ

ローマの、クラシカルなプロポーションに展開されるエレガントな造形は、鮮烈な心象を残す。1964年の275 GTBから続く伝統を、現代へ見事に昇華させたようだ。

DB12は、比較すると幅が広く、面構成は筋肉質。視覚的な刺激は強い。美しいというより、凛々しいと表現した方がしっくりくる。

グラントゥーリズモのプロポーションは、完璧ではないかもしれない。フェンダーと一体になった「コファンゴ」ボンネットは、少し引っ張られたように、不自然に長い。

ウエストラインは低いが、全長は3台で1番長い4959mmあり、視覚的な主張は強い。それでも、万人へ響くようなデザインの魅力では、2台に届いていないように思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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