バイパーのV10で320km/h超 無名のスーパーカー ブリストル・ファイター UK中古車ガイド

公開 : 2024.01.31 19:05

バイパーの8.0L V10エンジンを改良し、1026ps仕様では362km/hを叩き出したファイター 無名のガルウイング・スーパーカーを英国編集部が振り返ります

最高速度は320km/h以上 一癖あるスタイリング

かつて、革新的な設計のスーパーカーを提供した自動車メーカーが、英国には存在した。少し時代遅れな、量産車を提供していた時代もあったけれど。

今回ご紹介するファイターは、良くないブリストル・カーズのイメージを塗り替えるのに充分だった1台。新しい経営体制のもとで、不足ない開発予算が与えられ、まったく新しいスーパーカーが生み出された。

ブリストル・ファイター(2004〜2011年/英国仕様)
ブリストル・ファイター(2004〜2011年/英国仕様)

最高速度は320km/hを軽く超え、2シーターのボディにガルウイングドア。過去のブリストルと同じく、最高水準の品質が目指されていた。ただし、一癖あるスタイリングも従来どおりといえた。

空気抵抗には気が配られていたが、高速域でダウンフォースを生み出す処理は与えられていない。ハイパワーをなだめる、電子制御システムも備わらない。そのかわり、高度な設計技術で、優れた操縦性のバランスを実現していた。

高級感漂うインテリアには、飛行機のように天井側にもメーターが並ぶなど、デザイン的な特徴も備わる。この空間に身を委ね、何時間でも遠くを目指したいと思わせる。製造品質は、ハンドメイドの英国車水準。理解できる人が、納得すれば良いといえた。

発表は2004年。生産数は年間20台が計画されたものの、現実的に提供されたのは極少数に留まった。

ツインターボで1026psと362km/hの「T」も

アルミとカーボンで構成されたボディをまとう実際のファイターは、写真で見るよりカッコいい。アルファ・ロメオTZへ似た雰囲気も漂わせるが、20年前のスーパーカーの水準でも、全高は1346mmと高め。全幅は1795mmしかない。

それでも、空気抵抗を示すCd値は0.28と小さく、すこぶる速かった。車重も1600kgと比較的軽量で、532psを発揮する7990ccの自然吸気V型10気筒エンジンなら余裕しゃくしゃく。0-100km/h加速は4.0秒、最高速度は337km/hが主張された。

ブリストル・ファイター(2004〜2011年/英国仕様)
ブリストル・ファイター(2004〜2011年/英国仕様)

運転席へ座ると、重低音を奏でて回るV10エンジンに圧倒される。着座位置は高めだが、視界は広い。6速MTのシフトレバーはドライバー側へ傾き、72.4kg-mのトルクを操りやすくしている。

ボディは、塊のようにソリッド。乗り心地はしなやかで、ブレーキは強力に効く。特に印象的だったのがステアリング。ロックトゥロックは2.7回転と適度にクイックで、重み付けは理想的といえた。ダイレクトな感触が、高速域へ筆者を誘惑した。

2005年の価格は、532psの通常のファイターで22万9000ポンド。637psのファイター Sは、25万6000ポンドだった。ツインターボで過給し1026psまで高めたファイター Tも存在し、こちらの最高速度は362km/hに達した。

ブリストル・カーズが最後に提供した、個性的なスーパーカーがファイターだ。当時のターゲット層の心を掴みきれなかったことが、残念でならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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