フォード・フォーカス vs フォルクスワーゲン・ゴルフ

公開 : 2014.11.23 23:50  更新 : 2017.05.29 19:32

しかしながら個人所有をしようとするカスタマーにはガソリン・エンジンが魅力的なのはこの世代も同様。先代の1.6ℓにかわる新設計の1.5ℓエコブーストや、フォードお気に入りの1.0ℓ 3気筒エコブーストがさまざまな出力とともにスタンバイしている。

テスト車両にも3気筒999ccエコブーストが組み合わせられており、高級志向のタイタニウムXグレードをチョイスしていたため車両価格は£22,295(411万円)。さらに他のオプションを£3,000(55万円)程度追加したおかげで、最終的な販売価格は£25,775(475万円)となっていた。

対するゴルフは ’マッチ’ という名の中級グレード。122psの1.4ℓ TSIガソリン・エンジンを載せて£20,335(375万円)。そこからインフォテインメント・システムやアダプティブ・クルーズ・コントロールなどの価値あるオプションを選ぶことで£21,700(400万円)となっていた。

諸元表を見るかぎり、ゴルフよりもフォードのほうが最高出力が3ps大きいものの、最大トルクは20.5kg-mとゴルフの方が優勢(フォードの最大トルクはオーバーブースト時のもの)。一方の燃費はフォードが21.3km/ℓ、ゴルフが18.9km/ℓ、CO2排出量はフォードが108g/km、ゴルフが123g/kmと、経済性においてはフォードが一枚上手のようだ。

クラスのベンチマークに体を馴染ませるために、まずはゴルフに乗ってみることにする。客観的に見て、このクラスの中でもっとも高級感があるインテリアだと感じる。

走りだせばインテリアと同じように、乗り心地にも安っぽさがまったくない。これを味わえば味わうほど好きになっていくのも無理はないし、はたしてこれから先ゴルフ7が色あせていくのか、ということさえも疑問に思えるほどである。マイナーチェンジ前のフォーカスは一時的にはウケがいいかもしれないが、時を経るにつれて古臭くなっていくことが見え見えだっただけに、なおさらである。マイナーチェンジ後のフォーカスはいくぶん改善されているが、それでも時代を越えたデザインとは言い難いと筆者は思う。

ゴルフは乗ったそばから心を許してしまえるクルマだ。エクステリア同様に、インテリアにも普遍的な魅力があるし、素材による高級感の演出も見事なもの。スイッチのレイアウトに扱いづらさを感じることは皆無であるし、それぞれの操作感にもケチのつけようがない。視界もクリアで、快適なドライビング・ポジションを見つけるのにも、さほどの時間がかからない。

もちろんデビューからわずか2年しか経っていないため、運転していて違和感をおぼえることはない。自分の思った方向になめらかかつ静かに鼻先を向けることができ、初冬の英国の田舎道の上でも安定を欠くようなことは皆無だ。ややステアリングが軽いと感じる向きもあるかもしれないが、与えてくれる情報量の多さと正確性は見事なものである。

ボディ・コントロールにも不満はまったくない。パワーが有り余っているわけではないのに非力さをまったく感じさせないのは、マルチ・リンク式ではなく、トーションビームを ’あえて’ 選んでいることが大きいようだ。グレードによって、最適なセッティングを抜かりなく施していることが手に取るように感じられる。快適性、洗練性、安定性の三拍子がきっちりと揃い、なおかつ先読みが簡単にできるあたりには終始感心させられっぱなしだった。

裏を返せば ’ドキドキしない’ とも捉えられるかもしれないが、どんな所作にも一貫性がありながら、思慮深さを感じる点は、一種の興奮をも呼び覚ます。車重わずか1225kgということも幸いして、落ち着きや敏捷性にも唸らされることになる。GTIのそれを期待すると痛い目にあうけれど、それでも粘り強さや加速性能には多くの人が満足できるはずだ。

1.4ℓのTSIエンジンもいい仕事をする。言い古された表現ではあるが、公表されている0-100km/hタイムよりも、体感的に速く感じるのだ。目をみはるほどの速さがあるわけではないものの、トルクは十分であるし、その沸き上がり方もスムーズ。落ち着きにも好感がもてる。

販売から2年目のゴルフがこれほどに好印象なのだから、最新のフォーカスならば、これくらいのことは簡単にやってのけてくれるのではないかとも思えてくる。

フォーカスのスイッチのデザインは、マイナーチェンジ前よりも大幅にシンプルになっているし、それぞれの見分けも簡単。フォード製のシンク・インフォテインメント・システムの操作を難しく感じることもなかった。

視覚的な質感も見事に底上げされているうえ、柔らかい素材のパーツをふんだんに用いているあたりも、ゴルフに負けていない。

しかしフォルクスワーゲンの方が、どこかキリリとした印象がある。ゴルフがトップレベルの完成度を目指しているのに対して、フォーカスは欠点を修繕すること ’だけ’ に必至になっているからなのかもしれない。したがって先代ほどの差ではないが、インテリアにおいては、ゴルフ優勢である。

ただ走りだせば情勢はひっくり返る。フォーカスのほうが、上のレベルの走りをするからだ。3気筒エンジンが奏でる音は、エンスージアストたちの気持ちを高ぶらせること必至であるし、加速マナーがことのほか気持ちいい。

これよりひとつサイズの小さいフィエスタだと、そう感じることはなかったのだが、フォーカスに組み合わされているエンジンは、あたかも大きな過給器をつけているかのごとく目覚ましい加速を見せてくれる。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事