BYDシール 詳細データテスト 低速の快適性は要改善 高速域の長距離移動は快適 ハンドリング良好

公開 : 2024.02.03 20:25  更新 : 2024.02.12 17:55

結論 ★★★★★★★☆☆☆

セダンフォルムで後輪駆動ベースのBYDシールが、照準に入れているのは間違いなくテスラモデル3だ。この競争激しいクラスにあって、特別あげつらうポイントはほぼない。実際、シールはBYDにおける、ここまででもっともすばらしい努力の結晶だと言っていいい。

低速域での不快な乗り心地を除けば、乗り心地もハンドリングも調ったものに感じられる。ほかのBYDとは異なるカタチで、英国のストリートに合っているクルマだ。非常に快適なシートと実用的なインテリアの組み合わせは、長距離クルーズに向いた素養を感じさせる。航続距離も十分で、LFPバッテリーの技術的な魅力も兼ね備える。

結論:ハードウェアはみごと。その魅力をソフトウェアの問題が削いでいる
結論:ハードウェアはみごと。その魅力をソフトウェアの問題が削いでいる    JACK HARRISON

それでも、運任せで計画性のないところが見えてしまうのも事実だ。ステアリングに常にある振動、ADASの貧相さ、そして最大の問題点が巨大なセンターディスプレイだ。走行中の使用において、ソフト面の出来が悪すぎる。エアコンだろうが運転支援機能だろうが、この画面から操作しようとすると、それすなわちプロブレム、となってしまうのだ。

全体的に、BYDシールは好ましいEVセダンで、不足は感じられない。しかし、ライバルの方が洗練度は高いという印象は拭えない。価格面でも、最安というわけではない。
 

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

クルマをオフにすると、メーターにメッセージが。「注意:このクルマには充電予約機能があります。マルチメディアを介して、充電時間を設定できます」。もっとわかりやすく書いてほしい。

マット・ソーンダース

BYDのサスペンションチューンと内装デザインには、アンチ・テスラ的な感じがある。それも、いい意味で。反対に、大型ディスプレイに依存したインターフェイスはじつにテスラ的だ。しかし、わかりにくいトリックはない。使いやすいセットアップだ。

オプション追加のアドバイス

安価な1モーター仕様で、魅力は享受できる。エクセレンス仕様でもさほど高くないが、標準車でも速さは十分以上。2モーターは1モーターより効率が落ち、航続距離は短くなるはず。価格は上がるし、後輪駆動ほどのファントゥドライブはないかも。

改善してほしいポイント

・ユーザーインターフェースは改良を。メニューはよりロジカルに、大きな画面の使い方はよりスマートに、ボタンはより有効な機能を割り当ててうまく使ってほしい。
・運転支援機能は、欧州の道路へもっと上手くフィットさせてほしい。
・急速充電の速度を改善し、事前コンディション調整セッティングを加えてほしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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