BYDシール 詳細データテスト 低速の快適性は要改善 高速域の長距離移動は快適 ハンドリング良好

公開 : 2024.02.03 20:25  更新 : 2024.02.12 17:55

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

プライマリーとセカンダリーの乗り心地がここまでかけ離れたクルマというのも珍しい。走り出しの数mはショックがわずかながらある。低速で、とくに前輪が、ポットホールや雑な路面補修を踏み越えたときには、衝撃が大きい。

速度が上がるにつれ、衝撃は薄らいでいき、代わりに前輪は静粛性を妨げ出す。荒れた路面では、コンスタントに速度に依存んした振動がステアリングホイール越しに伝わってくるのだ。長距離走行ではかなり疲労につながる。

市街地では荒れた路面での洗練性に欠ける後輪駆動版シールだが、速度が上がるにつれ本領を発揮し、ワインディングでの走りはしなやかでRWDらしいバランスをみせる。
市街地では荒れた路面での洗練性に欠ける後輪駆動版シールだが、速度が上がるにつれ本領を発揮し、ワインディングでの走りはしなやかでRWDらしいバランスをみせる。    JACK HARRISON

高速道路の速度域に達すると、それはだいぶ小さくなるし、制限速度の113km/h付近では気にならなくなるのはありがたい。ただし、完全に消えることはない。

同時に、プライマリーライドは明らかにふわふわしている。小さなバンプはワンツーのリズム感ある動きで抑え込み、減衰不足によるフロート感はほとんどない。ここまでソフトなサスペンションだと、バンピーなB級道路は扱いかねそうだが、シールのそれは、最悪の路面でも処理できるサスペンションストロークが備わっている。

この手のしなやかさは、コントロール性を犠牲にしない。それだけに、コーナーではバランスのいい挙動を見せ、じつにたのしい。本来の性質はマイルドなオーバーステア傾向へと向かうもので、パワーオンでもオフでも、歯切れのいい旋回からのパワーをかけての脱出が確実に決まる。

トラクションとスタビリティのコントロールがカットできるのは低速でのみなので、ドリフトは楽しめなかった。とはいえ、テストコースでそれをしなければならない理由もなかったのだが。システムは、全体的によくできている。きわめてスムースで、完璧なトラクションを維持するために必要な以上のパワーを放出することはない。

ステアリングには、特別なところはない。ギア比は平均的なロックトウロック2.5で、小回りもまずまず効く。ラックの精確さも十分で、グリップレベルを知らせるフィードバックも、自信を持って走らせるのにちょうど足りるくらいだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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